研究課題/領域番号 |
25291006
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
千葉 志信 京都産業大学, 総合生命科学部, 助教 (20523517)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 翻訳アレスト / 蛋白質膜組込 |
研究概要 |
本研究は、二つの柱からなる。一つは、(1)翻訳途上鎖が翻訳を停止させるメカニズムの解明であり、もう一つは、(2)細胞因子が翻訳アレストを解除するメカニズムの解明である。うち、(1)に関しては、MifMの翻訳アレストが、枯草菌のリボソームでは効率よく起こるのに対し、大腸菌ではほとんど起こらないという以前の我々の研究結果に着目し、この両者の違いがどこから来るのかを、リボソームのポリペプチド鎖出口トンネルに露出するL4, L22およびL23蛋白質に着目し、変異解析を行った。まず、各種部分欠失変異を作成し、in vivoにおけるMifMの翻訳アレストを、MifM-lacZマーカー遺伝子由来のベータ・ガラクトシダーゼ活性を指標に評価したところ、L4とL22の欠失変異で翻訳アレスト活性が低下し、一方、L23の欠失変異で翻訳アレストは正常に起こるという結果が得られた。以上の結果は、MifMの翻訳アレストに、トンネル内のリボソーム成分が重要であり、とりわけ、リボソーム蛋白質のL4とL22の寄与が示唆された。大腸菌と枯草菌のL4およびL22のアミノ酸配列の違いから、リボソームの種特異性の原因を遺伝学的に究明し、L22の重要なアミノ酸残基を決定した。(2)翻訳アレスト解除に必要なSecMの領域を特定すべく、システマティックな変異解析を行った。その結果、シグナル配列とアレストモチーフに挟まれた領域の特定のアミノ酸配列が、翻訳アレストの解除に寄与している可能性が示唆される結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の二つの柱である、翻訳アレストの機構とその解除機構について、それぞれ上記に示した成果が得られつつある。翻訳アレスト機構の解明に向けては、特にMifMと枯草菌リボソームのL4、L22との相互作用が重要である可能性を示唆するに至った。また、翻訳アレストの解除に関しては、SecMの分子内のこれまで着目されていなかった領域に、翻訳アレスト解除に寄与していると思われる領域があることが示された。このことは、翻訳アレストが、翻訳途上差に対する引っ張り力によって解除されるというこれまでの単純な解釈では説明出来ない、新たなアレスト解除機構が存在する可能性を示唆している。 一方、翻訳アレスト機構に関しては、リボソーム成分の遺伝学的解析がまだ進んでいない。枯草菌リボソームは、ゲノム上に10コピー存在するため、遺伝学的な解析には、工夫が必要である。ゲノム上のrDNAのコピー数を減らした変異体を用いるなどの工夫を行ったが、さらなる改善が必要であることが分かり、今後の検討課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後とも、これまで通り、翻訳アレストの機構とその解除機構についてバランス良く推進させる。翻訳アレスト機構に関しては、リボソームRNAの変異解析を推進するとともに、共同研究者から入手した構造解析の結果も合わせて総合的にデータを解釈する必要がある。また、MifM、SecMともに、翻訳アレストに必要な分子内領域の意味合いの解明や、必要とされる物理化学的性質の解明、及び、アレスト解除に関わる蛋白質局在化装置のどのような機能が翻訳アレストの解除に実際に必要であるのかについて、遺伝学的に検討する。MifMの翻訳アレスト解除に関与するSpoIIIJという蛋白質膜組込装置そのものにも着目し、SpoIIIJがどのような機構で蛋白質を膜組込し、それがなぜMifMの翻訳アレストを解除するのかについても、共同研究による構造解析を含めて、検討を行う。
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