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2014 年度 実績報告書

タンパク質局在化をモニターする翻訳途上鎖の分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 25291006
研究機関京都産業大学

研究代表者

千葉 志信  京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (20523517)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード翻訳制御 / タンパク質膜組込 / 翻訳アレスト
研究実績の概要

枯草菌において蛋白質の膜組込状態をモニタリングする因子MifMは、翻訳の途上で、自身を翻訳しているリボソームと相互作用し、その活性を阻害することで、翻訳伸長アレストを引き起こす。この翻訳アレストは、MifMが、YidC依存的に膜組込される事で、解除される。本研究では、MifMが翻訳アレストを引き起こす機構と、YidCによる膜組込がそのアレストを解除する機構について解明することを目指している。翻訳アレストの解明については、ドイツの研究グループとの共同研究によって、MifMとリボソームから成る複合体の構造が解かれた。この構造解析により、MifMが、翻訳装置リボソームと、そのトンネル内で複数のコンタクトをしている可能性が示唆された。一方、遺伝学的な解析から、リボソームタンパク質のL4およびL22の変異が、MifMの翻訳アレストを損なう事が示され、これらの領域の翻訳アレストに対する重要性が示唆された。これらのタンパク質は、構造解析からも、MifMの近傍に位置し、相互作用している可能性が示唆されたリボソーム成分である。一方、翻訳アレストの解除には、MifMとYidCとの相互作用が重要である。東大・奈良先端大との共同研究により、YidCの結晶構造が解かれた。この結晶構造を元に、遺伝学的な解析を行ったところ、YidCのつくる膜内の溝の親水性と塩基性が、それぞれ重要な役割を果たすことが示された。これらの結果から、MifMは、YidCの溝の正電荷によって、静電的に引きつけられて膜挿入される事が示唆された。また、YidCの溝は、親水的な環境を提供することで、チャネルに依存しない膜組込を媒介している事も示唆された。これらの結果は、アレスト解除機構の解明に重要な手がかりとなるものと期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

共同研究により、MifMならびにYidCの構造情報が得られたことは、計画当初期待していた以上の成果であり、その結果、MifMによる翻訳アレストの分子機構について、特にリボソームの活性中心付近でのMifM-リボソーム相互作用の様子が一部明らかになった。また、この構造情報は、既に行った遺伝学的解析や、今後行う解析の結果を解釈する上で、非常に重要な手がかりとなる。翻訳途上鎖という動的なものの分子間相互作用の解明は、元来容易ではないものであるが、期待以上に大きな進展を見せた。一方、翻訳アレストの解除については、そのトリガーとなるMifMの膜組込の分子機構が、計画当初はほとんど明らかではなかった。ところが、YidCの結晶構造解析と、その情報を元にした我々の遺伝学的解析から、YidCによるタンパク質膜組込機構について、チャネルに依存しない新規の機構を用いたものであることが判り、また、生化学的解析や、遺伝学的解析を進めるうちに、その実体が、少しずつ明らかにされてきた。この一連の研究成果は、YidC研究におけるブレイクスルーと言ってもよい成果であり、MifMの翻訳アレストの解除機構を理解する上でどうしても必要であったYidCによるタンパク質の膜組込機構が明らかにされてきたことは、本研究を遂行する上で大きな前進であると考えられる。今後、この分子機構がさらに詳細に解析され、そこで生じるであろう新生ポリペプチド鎖の動的挙動が明らかになれば、翻訳アレストの解除機構の解明に迫ることが出来るものと期待している。

今後の研究の推進方策

MifMとリボソームの相互作用の様子が、構造解析から明らかにされつつある。この構造情報を元にした遺伝学、もしくは、より無作為的な遺伝学を行い、この構造情報と照らし合わせることで、MifMとリボソームの相互作用の実体を明らかにしたい。特に、リボソームタンパク質の重要性をこれまで明らかにしてきた一方、リボソームのRNA成分についてはまだ解析が遅れている。今後は、RNA成分の重要性について解析を進める。その解析を通じて、MifMがどのようにしてリボソームの活性を制御しているのかについて明らかにする。
一方、YidCによるMifMの膜組込に重要な要素が幾つか明らかにされてきた。YidCが膜内につくる溝の親水性と塩基性が、MifMの膜組込、ひいては、MifMの翻訳アレストを解除する事に繋がるらしい。しかしながら、このYidCの作る膜内の溝の実体については、さらなる解析をすることで理解を深める必要がある。修飾実験などを含めた解析で、この溝の性質をさらに解明する予定である。加えて、YidCの細胞質領域もまた、MifMの膜組込及び翻訳アレスト解除に重要な役割を果たすことが示唆された。しかしながら、その理由は明らかではない。そこで、より詳細な変異解析から、この領域のどのような性質が重要であるのかを探り、YidCによるMifMの膜組込とアレスト解除の分子機構を理解する手がかりを得る。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] MifM monitors total YidC activities of Bacillus subtilis including that of YidC2, the target of regulation.2015

    • 著者名/発表者名
      Chiba, S. and Ito, K
    • 雑誌名

      J Bacteriol

      巻: 197 ページ: 99-107

    • DOI

      10.1128/JB.02074-14

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Identification of a SecM segment required for export-coupled release from elongation arrest.2014

    • 著者名/発表者名
      Nakamori, K., Chiba, S. and Ito, K.
    • 雑誌名

      FEBS Letter

      巻: 588 ページ: 3098-3103

    • DOI

      0.1016/j.febslet.2014.06.038.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] YidCによるタンパク質膜組込機構の解明2014

    • 著者名/発表者名
      千葉志信、熊崎薫、塚崎智也、濡木理、伊藤維昭
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-27
  • [学会発表] YidCによるチャネルに依存しない蛋白質膜組込機構2014

    • 著者名/発表者名
      千葉志信、熊崎薫、塚崎智也、濡木理、伊藤維昭
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
    • 招待講演
  • [学会発表] チャネルに依存しない蛋白質膜組込機構:アレスト因子MifMを利用したYidCの機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      千葉志信、熊崎薫、塚崎智也、濡木理、伊藤維昭
    • 学会等名
      2014年度グラム陽性菌ゲノム機能会議
    • 発表場所
      鶴岡
    • 年月日
      2014-09-14 – 2014-09-15
  • [学会発表] 働く新生鎖MifMを利用した蛋白質膜組込装置YidCの機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      千葉志信、熊崎薫、塚崎智也、濡木理、伊藤維昭
    • 学会等名
      第14回日本蛋白質科学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-06-25 – 2014-06-27
    • 招待講演
  • [学会発表] YidCによるタンパク質膜組込機構2014

    • 著者名/発表者名
      千葉志信、熊崎薫、塚崎智也、濡木理、伊藤維昭
    • 学会等名
      第61回生化学会近畿支部例会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2014-05-17

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公開日: 2016-06-01  

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