研究課題
本研究課題は、「翻訳途上鎖が翻訳伸長を一時停止(アレスト)するメカニズムの解明」と、「翻訳アレストの解除機構の解明」の2つの柱からなる。これまで、翻訳途上鎖による翻訳アレストは、リボソームの大サブユニットにあるペプチド鎖出口トンネルの成分と翻訳途上鎖の特定のモチーフが相互作用することで引き起こされるというのが一般的な理解であった。ところが、今回、我々は、枯草菌の翻訳アレスト因子MifMの遺伝学的解析から、MifMの翻訳途上鎖とリボソームトンネル内成分との相互作用に加えて、MifMとリボソームのトンネル外成分との相互作用が、翻訳アレストの安定化に寄与している可能性を示す結果を得ている。この知見は、翻訳伸長速度の調節における翻訳途上鎖の作用機序について、これまで知られていなかった領域での相互作用の関与を示すものである。枯草菌において、タンパク質膜組込装置YidCのホモログの1つ、SpoIIIJ (YidC1) の活性低下は、第2のホモログであるYidC2の発現誘導を引き起こす。このYidC2の発現誘導には、MifMの翻訳アレスが必要である。一方、MifMのSpoIIIJ依存的な膜挿入が、MifMの翻訳アレストの速やかな解除を引き起こし、結果として、YidC2の発現を抑制する。YidC2の発現誘導を引き起こす化合物を得ることが出来れば、YidC依存的なMifMの膜挿入とそれに伴う翻訳アレスト解除の分子機構を解明する上で有用なツールとなり得るとの発想から、スクリーニングを行ったところ、YidC依存的なタンパク質膜組込を阻害することで翻訳アレスト解除を阻害すると思われる化合物が、複数得られつつある。今後、さらなる確認実験が必要ではあるが、これらの化合物は、YidC依存的なタンパク質膜組込やそれに伴う翻訳アレスト解除機構を研究するためのツールとなり得るかも知れない。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~k4563/index-j.html