研究課題/領域番号 |
25291008
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
姚 閔 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 教授 (40311518)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リボソーム生合成 / 5S rRNP / Rrs1 / Rpf2 / 5S rRNA / X線結晶解析 / 相互作用解析 |
研究実績の概要 |
近年,真核生物リボソームの5S rRNA前駆体(トランス因子,リボソームタンパク質,5S rRNA,からなるrRNP複合体)が,核内において,他のrRNAとは異なり,RNAポリメラーゼIIIによって合成され,特殊な経路を経て成熟した後に,リボソーム前駆体90Sと会合することによって,リボソームの最終的な成熟を開始させることが明らかになった.本研究では,X線結晶構造解析の手法を用いて,5S rRNA成熟に関わる各因子間の相互作用と構造変化を示すスナップショット像を解析することで,5S rRNAの成熟機構に迫る.また,タンパク質合成装置リボソームの品質管理における5S rRNP複合体の役割を解明する.
本研究の目的を達成するため,平成25年度に引き続き,得られたRpf2-Rrs1複合体のコア構造(Rpf2:18-262aa; Rrs1f:10-113aa)に基づいて,Rpf2とRrs1の変異体を作製し,結合実験によって5S rRNA結合能を検討した.その結果,Rpf2 N末ドメイン上の3つの領域が5S rRNAとの結合に重要であることが明らかになった.これらの情報をRpf2-Rrs1複合体のコア構造に加えて, Rpf2-subcomplexモデル,更に,Rpf2-subcomplexとリボソーム結合モデルを作製したところ,Rpf2-Rrs1複合体のコアがリボソーム前駆体と5S rRNAの間に位置すると考えられた.このモデルからRpf2-Rrs1複合体のコア(N末ドメイン)は90Sと5S rRNA,RpL5,RpL11をつなぐアダプターとしての機能を持ち,90S上で他の生合成関連因子の取り込みを行う,足場タンパク質複合体であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,トランス因子Rpf2,Rrs1および5S rRNP複合体構造解析により,タンパク質合成装置リボソームの品質管理における5S rRNP複合体の役割を解明することである.平成25年度に得られたトランス因子Rpf2-Rrs1複合体のコア構造に基づいて,Rpf2とRrs1のドメイン機能解析を進め,5S rRNPのモデルを提案することができ,着実に研究を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年までに,Rpf2とRrs1のコア部分が安定な複合体を形成し,足場タンパク質複合体として機能することが分かったため,平成27年度は,得られたRpf2-Rrs1複合体のコア構造,及び5S rRNAとの結合情報に基づいて,Rpf2-Rrs1複合体の変異体,5S rRNAの変異体を作製し,それらのサンプルを組み合わせた複合体を用いて,5S RNP複合体のX線結晶構造解析を進める.また,今後の研究計画の一部を変更し,Rrs1のC末端ドメインの構造解析も行う.そして,得られた構造を用いて機能解析を進め,タンパク質合成装置リボソームの品質管理における5S rRNP複合体の役割を解明する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に,試薬や実験器具類の購入について検討し節約に努めた結果,3,400,000円の使用残高が生じたが,これを平成27年度に実施予定であるRpf2-Rrs1複合体,また,5S rRNAの変異体作製のための消耗品購入に充てる.なお,本年度,蛋白質大量調製用の消耗品費として使用した328,511円(本年度内に納品完了済)の支払い処理が平成27年度以降となった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究費730万円のうち,一般試薬・結晶化用試薬類,蛋白質精製用カラムなどの消耗品費に214万円,大型放射光施設での回折データ収集や学会参加等の旅費として120万円,研究補助を行う博士研究員人件費として330万円,その他,学会参加費や英文校正料,研究成果論文投稿料として66万円を計上する.
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