研究課題
自然免疫は病原体の感染をいち早く察知し炎症反応を引き起こす一方、後に続く獲得免疫を誘導するという極めて重要な役割を果たす。自然免疫の中でも病原体センサーとして機能するTLR (Toll-like receptor)はその重要性から分子細胞生物学的・医学的な研究はもちろん構造科学的な研究も広く行われている。本申請では核酸認識に関わるTLR7, 8, 9に注目し、リガンドとなる核酸の認識機構・リガンド結合による活性化機構を構造科学的に明らかにすることによって謎が多い核酸による活性化を“目に見える形で”具現する。さらにその構造情報をもとに新規のリガンド設計をめざす。これまで我々はヒトTLR8の細胞外ドメインと低分子化合物との複合体の構造解析に成功しており、リガンドによって引き起こされるドメインの再構成、および詳細なリガンド認識機構を明らかにしてきた(Science, 2013)。我々はさらにTLR8の天然基質である一本鎖RNAとの複合体構造を解明した。驚くべきことに、TLR8は一本鎖RNAの分解産物であるウリジンと短鎖RNAを認識していた。しかもウリジンの結合サイトは低分子化合物との結合サイトと同一であった。またウリジンのTLR8への結合は短鎖RNAの結合により飛躍的に増強され、協調効果があることがわかった。これはTLR8が構造的にも化学的にも異なる分子によって同様に活性化されるという謎を解明するものである
2: おおむね順調に進展している
本研究の達成目標の一つであるTLR8と一本鎖RNAとの複合体構造を決定し、論文として発表することもできたため。
一本鎖DNAを認識するTLR9との複合体解析に向け試料調整を行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~kouzou/