研究課題
アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβ蛋白質(Aβ)は、会合して可溶性のオリゴマーや、不溶性のアミロイド線維を形成する。近年、細胞膜上に繋留されているプリオン蛋白質(PrP)がAβオリゴマーの受容体として機能し、アルツハイマー病を引き起こす事が提唱された。我々は、PrPを高い親和性で認識するRNA分子(R12)とPrPとの相互作用様式を明らかにしてきた。R12によって認識されるPrPのアミノ酸残基100番前後は、Aβオリゴマーとも相互作用する領域である。従って、Aβオリゴマーと競合的にPrPと結合するR12によって、PrPとAβオリゴマーの結合を阻害することが期待される。本研究では、PrPがAβの線維化に及ぼす影響およびその影響をR12によって妨害できるのかについて調べた。今回我々は、アミロイド線維に結合して蛍光を発するチオフラビンS(ThS)を用いて、経時的に線維化反応を追跡した。まずAβ単体では、時間変化に伴ってThSの蛍光強度の増加がみられ、Aβの線維化を確認した。一方で、AβとPrP共存下の場合、時間変化によるThSの蛍光強度の増加がみられなかった。これより、PrPがAβと相互作用してAβの線維化が阻害されたと考えられる。さらに、AβとPrPおよびR12共存下では、ThSの蛍光強度の増加がみられた。このことから、PrPの相互作用の相手がAβからR12となり、PrPから遊離したAβが線維化した事が示唆された。またR12が2分子会合して形成する特異な立体構造とほぼ同一な立体構造を、一分子で形成する事ができるRNA配列を見出す事に成功した。この配列からなるRNA分子は、R12同様にPrPに強く結合する活性を有する事も分かった。さらに本研究で培われた核酸の構造解析の技術を生かす事で、他の配列からなる核酸に関し、特異な立体構造と機能との相関に関する知見を得る事もできた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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