研究課題/領域番号 |
25291014
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山下 栄樹 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (00294132)
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研究分担者 |
中川 敦史 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (20188890)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / 膜タンパク質複合体の物質輸送 |
研究概要 |
本研究では、緑膿菌由来の異物排出タンパク質複合体システムMexAB-OprMの機能する現場で形成する構造をX線結晶構造解析で解明し、抗生物質を菌体外に放出するメカニズムを明らかにする。本年度はMexAB-OprM複合体システムの化学量比について調べる。そのために、以下のことを実施した。 I. 外膜チャンネルタンパク質OprMの安定化条件の検討:大腸菌の発現系を大量培養し、種々の界面活性剤を使ってOprMの可溶化を行った。界面活性剤で可溶化した試料を、カラムを用いて単離・精製を行い、すでに結晶構造解析に成功している界面活性剤OGを用いた試料の性状を基準として、種々の界面活性剤で可溶化した試料の性状を調べ、OprMを安定に保つ界面活性剤の探索を行った。OprMの収量やゲル濾過の溶出位置およびピークの形状、動的光散乱法を用いた単分散性について調べた結果、OG以外にマルトシド系の界面活性剤でOprMを安定に単離できることが分かった。 II. 内膜トランスポーターMexBの安定化条件の検討:OprMと同様に、大腸菌の発現系を大量培養し、様々な界面活性剤を使ってMexBを単離・精製し、MexBを安定に保つ界面活性剤の探索を行った。MexBについては、すでに結晶構造解析に成功している界面活性剤DDMを用いた試料の性状を基準として、種々の界面活性剤で可溶化した試料の性状を調べた結果、DDMを含むマルトシド系の界面活性剤だけが安定に単離できた。 III. 安定なMexAB-OprM複合体システムの再構成の検討:各膜タンパク質が安定な界面活性剤を用いてそれぞれを精製し、複合体形成実験を行った。複合体形成の確認については、ゲル濾過とSDS電気泳動法により確認を行った。MexAB-OprM複合体の形成を確認できたが、SDS電気泳動法を用いて各構成タンパク質の量比を決定するほどの量が得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜貫通領域がβバレル構造からなる外膜チャンネルタンパク質OprMとαヘリックス構造からなる内膜トランスポーターMexBを安定に精製できる界面活性剤の種類は異なると考えられていたが、両方の膜タンパク質を安定に精製できる界面活性剤を数種類見つけることに成功した。 見つけた数種類の界面活性剤の中から一つ選んで、それぞれの膜タンパク質(OprM, MexB)を精製し、MexAB-OprM複合体の形成実験を行った。ゲル濾過では、各構成タンパク質(OprM, MexAB)の分子量より大きなところにピークが見られ、ピークをSDS電気泳動で確認したところ、各構成タンパク質が含まれており、複合体形成に成功した。 MexAB-OprM複合体に含まれている各構成タンパク質の量比を見積もれるだけの量が取れていないので、MexAB-OprM複合体を安定に保つ条件を見つける必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
MexAB-OprM複合体システムの構造解析に向けて以下の今後以下の方策で行う。 I. 安定なMexAB-OprM複合体システムの再構成の検討および化学量比の決定:MexAB-OprM複合体を構造上均質かつ安定に保つ条件の検討を、動的光散乱法による溶液中での分散や電子顕微鏡での分子形の均一性などの評価方法を用いて行う。安定なMexAB-OprM複合体が得られた後、電気泳動法により各構成分子の化学量比を決定する。 II. 結晶化条件の検討:動的光散乱法や電子顕微鏡を用いて長期の変化について調べながら、結晶化条件の探索を行う。また、リン脂質を利用した結晶化も検討する。近年、電子顕微鏡用カメラの技術が目覚ましく発展しており、イメージ再構成法で原子分解能にせまる構造が得られるようになった。阪大蛋白質研究所に同様の電子顕微鏡用カメラが導入されたので、電子顕微鏡の観察では、新規のカメラを利用する。 III. 結晶構造解析:SPring-8のビームラインBL44XUで回折強度データを収集し、MexAB-OprM複合体システムの立体構造を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画申請時は、異物排出タンパク質複合体システムを構成する2種類の膜タンパク質(MexB, OprM)をタイミング良く精製するための超遠心機を設備備品として考えていたが、オートサンプラーを用いた多種検討を短期間に行うことによって、それぞれの膜タンパク質の精製方法を改善することに成功した。これにより、現有の超遠心機で2種類の膜タンパク質をタイミング良く精製することが可能となった。 現有の超遠心機で2種類の膜タンパク質をタイミング良く精製することが可能となったが、2種類の膜タンパク質を安定に精製できる界面活性剤が高価なため消耗品費用が嵩む。また、結晶化試料観察に新型の電子顕微鏡用カメラを利用するための消耗品等が発生するので、当初予定より消耗品費が多くなることが予想される。構成する3種類のタンパク質を同時に大量に精製するためには、精製過程の初期に人手が必要となるので、アルバイトを含む人件費として使用予定である。
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