研究課題/領域番号 |
25291015
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
永野 真吾 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60286440)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アナモックス / X線結晶構造解析 / ヘム / 水質浄化 / 窒素循環 |
研究実績の概要 |
亜硝酸を用いて嫌気的にアンモニアを分子状窒素に変換するアナモックスは、窒素循環のプロセスとして最後に見出された。このプロセスは、従来の硝化・脱窒による窒素除去に比べてエネルギー消費がほぼ半減する次世代の水質浄化法として応用が期待され、海洋の分子状窒素の生産のおよそ半分を担うと考えられている。本研究では、アナモックス菌による窒素代謝の鍵反応である一酸化窒素とアンモニアからヒドラジンを産生するヒドラジン合成酵素(HZS)の分子メカニズムの解明をめざし、この酵素のX線結晶構造解析を行う。 昨年度までに、常温性アナモックス菌由来HZSの3つのサブユニットを単独のmRNAに転写するモノシストロン性発現ベクターを用いてHZSの発現に成功していたが、発現量が少なくheme cが取り込まれる割合も少なかった。そこで本年度は1つのmRNAに転写するポリシストロン性発現ベクターの構築を行った。HZSの細胞毒性により目的とするベクターの作成は困難であったが、コピー数を制御することで基底レベルの発現量を低く保つことができるpETcocoベクターを用いてポリシストロン性発現ベクターの構築に成功した。このベクターを用いて発現した場合、heme cが取り込まれる割合が増加し、HZSの切断を抑制することができた。 また、高熱性アナモックス菌由来のHZSのモノシストロン製発現系を、常温性アナモックス菌由来HZSの場合と同様に構築することに成功した。 さらに、本研究開始前から行っていたメンブレンバイオリアクターを用いたアナモックス菌の大量培養で、アナモックス菌を約100グラム得ることができた。このアナモックス菌からHZSを精製する手法についてもほぼ確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メンブレンバイオリアクターで大量にアナモックス菌を培養することができ、HZSの精製方法もほぼ確立したため、天然のHZSを大量に精製し、結晶化試料を得る見込みを立てることができた。また、昨年度まで発現量と切断が課題になっていた大腸菌を用いた発現系も、ポリシストロン性発現ベクターを用いることで課題を解決しつつある。結晶化に適した安定なタンパク質を得られると期待される高熱性アナモックス菌由来のHZSについて、発現系を構築することができたため、今後の結晶化に期待ができる。
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今後の研究の推進方策 |
高熱性アナモックス菌由来HZSについてもポリシストロン性発現ベクターを構築し、熱安定性の高いHZSの大量発現に取り組む。常温性のHZSについて、引き続き大量発現を行い、精製方法の確立に取り組む。アナモックス菌からHZSを精製する手法はすでに確立したので、この方法を用いてHZSの大量精製を行い、含有金属の分析、HZSヘテロ3量体および各サブユニットの分子量測定を行う。また、HZSはシグナル配列を持ち、成熟HZSではこれらが切断されている。この切断部位を明らかとするため、アミノ末端のアミノ酸配列を解読する。これまでに報告されている精製HZSのヒドラジン合成活性は、アナモックス菌そのものに比べて非常に低い値にとどまっている。そこで、得られたHZSを用いて、嫌気条件、金属イオンの添加などによる活性の変化を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
高熱性アナモックス菌由来HZSの発現ベクターは、常温性アナモックス菌由来HZSの発現ベクターを構築した手法にのっとって行ったため、計画していた酵素類の消費が抑えられ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
アナモックス菌の大量培養が順調に進んでおり、大量に目的酵素を精製することが可能となっている。この精製と結晶化に使用する計画である。
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