私たちのDNAは一日に何万もの塩基が損傷を受ける。DNA複製中に生じた損傷は、複製ポリメラーゼを停止させてしまい、その結果、細胞死やがん化など、細胞にとって概ね好ましくない情況になる。このような場合、細胞はDNA損傷による複製停止を回避するために、「損傷トレランス」と呼ばれる仕組みによってDNA複製を継続する。損傷トレランスには、2つの経路、「損傷乗り越え合成」と「テンプレートスイッチ」が知られている。本研究では、DNA損傷を修復せずにDNA複製を続ける「損傷トレランス」の分子メカニズムを、タンパク質のX線結晶構造解析と構造に基づく機能解析によって解明し、さらに新たな創薬戦略の構造基盤を得た。
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