(1)昨年度に引き続きリボソーム機能部位との相互作用機構やmRNA品質管理機構との関わりについて詳細な解析を行った。昨年度、真核生物のtRNA擬態タンパク質であるペプチド鎖解離因子eRF1のL123残基(出芽酵母での残基番号)の変異はさまざまな終止コドン認識パターンを生成することができる。しかしながらこれまでにL123残基の変異体が終止コドン以外のコドン(センスコドン)を認識しうるかについては未解明であり、これを明らかにすることは、tRNA擬態分子並びに複合体を形成して働くGタンパク質のリボソーム上での機能直行性や、高次機能発現の分子機構を明らかにする上で有用であると考えた。解析の結果、L123変異の幾つかは、細胞内で終止コドンのみならず、センスコドンの解読にも作用することが明らかとなった。このことは、Gタンパク質の制御によりペプチド鎖解離因子が、終止コドン以外のコドンで停滞することにより引き起こされるNGD/NSD mRNA品質管理機構などでリボソームレスキューを行う可能性を示唆した。 (2)mRNA品質管理機構におけるPelota-HBS1tRNA擬態分子複合体と同様な機能性を発揮すると考えられているEF1αホモログである出芽酵母Ski7タンパク質は、これまでにおおまかな機能ドメイン解析しかされていなかったため、mRNA品質管理機構の分子機序を推測する上で支障となっていた。これに対し、系統的な変異導入実験もしくは分子遺伝学的な変異選択系の構築をおこなうことにより、 N末端領域、C末端領域におけるNSD関与アミノ酸残基を特定することに成功した。立体構造データを用いた議論から、Ski7のGドメインのGTP結合想定領域に隣接する領域がNSD制御に関わることが判明し、C末端側でのグアニンヌクレオチド結合モードとN末端側での分子間相互作用が共役する分子作用モデルを構築した。
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