研究課題/領域番号 |
25291025
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田嶋 正二 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (50132931)
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研究分担者 |
末武 勲 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (80304054)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / DNAメチル化酵素 / DNAメチル化模様維持 |
研究概要 |
脊椎動物ゲノムのCpG配列中のシトシン塩基は、しばしばメチル化修飾を受けている。シトシン塩基のメチル化は、遺伝情報発現に抑制的に働く“エピジェネティクス”要因の一つであり、DNAのメチル化による遺伝情報制御は発生・分化に欠くことができない重要な役割を果たしている。メチル化模様は複製の過程で次世代の細胞に正確に伝えられる。この世代を超えたメチル化模様の伝達にはDnmt1と呼ばれるDNAメチル化酵素の一つが責任酵素として働いている。本研究計画ではDnmt1について、へミメチル化(片鎖だけがメチル化された)DNAを認識する機構と、生体内でメチル化模様の維持に必須な因子であるNp95(別名Uhrf1)との共役について、構造生物学的、生化学的にするが、本年度はNp95とDnmt1が直接、あるいは間接的に相互作用して維持メチル化活性に寄与することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、Dnmt1のDNA維持メチル化機構を試験管内で解析し、Np95/Uhrf1の中のヘミメチルDNAに結合するSRA領域がDnmt1の複製フォーク標的化シグナル(RFTS)領域と直接相互作用し、Dnmt1の触媒領域を覆っているRFTSを除去して、DNAが触媒中心にアクセスしやすくさせていることを明らかにした。また、RFTS領域と触媒領域の水素結合に関わるアミノ酸残基に変異を入れた組換えDnmt1のDNAメチル化活性を測定し、この水素結合がRFTSを触媒ポケットに繋ぎとめるうえで重要であることを示した。さらに、ヘミメチルDNAに結合したSRA領域はRFTSと相互作用することでDNAを遊離することを明らかにした。以上の成果を論文として発表した。 また、ゲノムのメチルシトシンはヒドロキシル化修飾を受けることにより、脱メチル化の印となっていることが知られている。胚性幹細胞ではヒドロキシルメチルシトシン含量が一般の体細胞に比べて高いが、これは新規メチル化修飾酵素Dnmt3aとDnmt3bによりメチル化されたシトシンが選択的に標的となってヒドロキシル化修飾を受けていることによる。このヒドロキシル化されたシトシンは、複製過程でDnmt1により維持されないことにより消去される。胚性幹細胞内でDnmt3aとDnmt3bによりメチル化されるシトシンは積極的にヒドロキシメチル化されることにより、複製を介してDnmt1による受身な脱メチル化により、ダイナミックに調節されていることを明らかにした。成果を論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はRFTS領域が細胞内で維持メチル化にどのように寄与しているのかについて、Dnmt1をN末端側から順次欠失させ、内在的なDnmt1を薬剤で欠失させることができるように細工した胚性幹細胞に発現させ、N末端の領域、特にRFTSの維持メチル化に果たす役割を明らかにする。すでに、N末欠失型とRFTSと触媒領域の水素結合に関わるアミノ酸残基に変異を入れたDnmt1をES細胞に発現させたクローンの解析を進めており、今年度中に再現性をとり論文投稿する予定である。また、変異型組換えDnmt1とUhrf1を用いた試験管内での解析については、RFTSとSRA領域に部位特異的な点変異を導入して、相互作用するアミノ酸残基を同定する。これにより、複製フォークに存在するNp95/Uhrf1からDnmt1がどのようにしてヘミメチルDNAを受とっているのかについて理解する。また、試験管内では、Dnmt1はヘミメチル化DNAを高い信頼度(fidelity)で維持メチル化できないが、細胞内では複製過程で非常に高い信頼度でメチル化模様は維持されている。Np95/Uhrf1を共存させることにより維持メチル化活性の信頼度が上昇する可能性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験が予想以上にうまく進み、経費に無駄がなく研究を進めることができたため。 特に特別の出費の予定はなく、計画通りの支出が見込まれるが、今年度は人員を昨年度以上にかけて計画を進める予定であるので、物品費が昨年度以上に嵩むことが予想される。
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