(1)GRWD1はRPL11-MDM2経路を介してp53を抑制し発がんを促進する 本研究費の支援を受けた研究から、総合的に以下のことが明らかとなった。①GRWD1はがん抑制因子RPL11と直接結合することでRPL11によるMDM2抑制を阻害し、結果としてp53誘導に対して抑制的に働く。② GRWD1をHPV16 E7、活性化Ras G12Vと共にヒト正常細胞に発現させると、細胞をtransformする。③ このGRWD1のtransform活性は、RPL11との結合に依存している。以上から、GRWD1は新たながん遺伝子として機能していることが明らかとなった。更に、④ transforming活性と一致して、GRWD1の過剰発現はp53が野生型のグリオーマ患者において予後不良と強く相関していた。変異p53をもつ同患者では、そのような相関は認められなかった。 (2)GRWD1はユビキチンリガーゼEDDと共にRPL23を分解制御しており、本経路もp53抑制活性に寄与している 加えて以下のことも明らかとなった。①GRWD1の過剰発現はRPL23のプロテアソームを介した分解を促進する。②siRNAによるGRWD1発現抑制は、核小体ストレス誘導時にRPL23量を増加させる。③EDDの過剰発現でもRPL23タンパク質量が減少し、GRWD1およびEDDの共発現で相乗的なRPL23量の減少が見られる。④RPL23は細胞内でユビキチン化を受けており、そのユビキチン化がGRWD1およびEDDの過剰発現で増加する。更に、⑤細胞におけるRPL23過剰発現はMDM2を抑制し腫瘍原性を低下させるが、これらの活性をGRWD1過剰発現は部分的に打ち消すことができる。以上から、GRWD1はEDDと共にRPL23を分解制御しており、この経路もGRWD1によるp53抑制活性に寄与していることが明らかとなった。
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