研究実績の概要 |
銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)は、銅・亜鉛イオンの結合と分子内ジスルフィド(S-S)結合の形成により活性化する抗酸化酵素である。真核生物では、銅シャペロンであるCCSタンパク質がSODに銅イオンを供給することが知られているが、原核生物にはCCSに相当する銅シャペロンが存在せず、SODがどのように金属イオンを結合して活性化するのか明らかとなっていない。そこで本研究では、大腸菌のSOD(SodC)に着目し、CCSに依存しないSODの新たな活性化メカニズムについて、分光学的手法により検討した。その結果、SodCにおけるS-S結合の形成を担う二つのCys残基(Cys74, Cys169)が、チオレートとして存在する際にはCu+イオンの配位子として機能することが分かった。さらに、これらのCys残基はCu+イオンを配位することで速やかに空気酸化を受け、SodCに分子内S-S結合が導入されることも明らかにできた。分子内S-S結合の形成はSodCのフォールディングに必須であることが知られている。よって、SodCはCys残基を利用して銅イオンを捕捉した後に、空気酸化によるS-S結合の形成に伴って銅イオンが活性部位に移動し、活性化するのではないかと考えられる。つまり、SODに高度に保存された二つのCys残基が、銅イオンの捕捉とタンパク質構造の安定性を制御する新たなメカニズムを提案する。
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