研究概要 |
糖鎖修飾はタンパク質の最も普遍的な翻訳後修飾の一つであり、その修飾はタンパク質の安定性や生理機能に重要な役割を果たす例は枚挙に暇がない。哺乳動物や出芽酵母において、糖タンパク質上の糖鎖がどのように合成されるのか、その分子機構はほぼ解明されたといってもよい。一方で、興味深いことにそれらの糖鎖がどのように分解されるのかに関してはこの“ポストゲノム”と称される現在においても不明な点が多い。殊に出芽酵母に至っては、このような教科書に記述されるべき基本的なプロセスの殆どが未だに不明といっても過言ではない。そこで本研究では、出芽酵母における糖タンパク質糖鎖の代謝機構の全容解明を目指した。本年度は(1)PNGase非依存的な遊離糖鎖(fOS)の生成反応について、それがオリゴ糖転移酵素(OST)の活性によるものであることを生化学的、および遺伝学的な解析によって明らかにした(Harada, et al., JBC 288, 32673(2013))。また、先ほど哺乳動物においてN型糖鎖の前駆体であるドリコール結合型糖鎖からリン酸結合遊離糖鎖(POS)を生成する反応として、新規ピロフォスファターゼが発見された(Harada, et al., PNAS 110, 19366 (2013))が、同様の活性は出芽酵母には見出せなかった。最後に、O型糖鎖の代謝にかかわると予想される新規のO型糖鎖脱離酵素について、その遺伝子同定に非常に有用だと思われる酵母変異株の単離に成功した。また、現在細胞質における遊離糖鎖の代謝機構の詳細についても解析中であり、研究期間内にまとめることが出来る感触を得ている。
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