研究課題
細胞質ダイニンは微小管上で、バイアスのあるブラウン運動、負荷をかけたときのキャッチボンド機構、無負荷時の自己制御的スタック状態、など特徴的な振舞いを示す。また、細胞内で多くの役割を担うダイニンが実質的にただ1つの重鎖遺伝子にコードされているので、結合タンパク質による精巧な制御機構が存在するものと考えられる。これらの制御機構を明らかにするために、以下の研究を行った。(1)哺乳類の細胞質ダイニン1分子の運動は、無負荷状態では微小管上を大きく揺らぎ、方向性のある運動成分は非常に小さい。このほぼブラウン状態にある1分子ダイニンに負荷をかけるために、ダイニンの尾部側にキネシン変異体(ATP分解活性を失っているが微小管結合能を有する)を融合させた複合体を作製した。このキネシン(inactive)-ダイニン(active)複合体1分子は、微小管上をスムースにマイナス端方向に向かって運動することがわかった。キネシン部分は微小管に対するアンカーとなり、ダイニンの運動に対する負荷となるので、1分子ダイニンは連続的に微小管上を歩くことができる、と結論することができた。(2)ダイナクチンは主要なダイニン結合タンパク質であり、複雑な構造の複合体である。このうち、p150サブユニットに注目し、そのN末端ドメイン(Cap-Gly)と中ほどのコイルドコイル領域(CC1)がダイニンの微小管結合に与える影響を調べたところ、Cap-Glyは結合を補強し、運動連続性をあげる役割があるが、CC1は結合を阻害して微小管からひきはがす役割があることがわかった。このCC1の効果についてはこれまでの定説を覆す新規のものであり、細胞内でダイニンがカーゴ(積み荷)を背負わずに受動的に微小管のプラス端に配置されるときに、微小管と余計なコンタクトをとって配置の邪魔をすることのないように設計されたシステムであると考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Bolecular Biology of the Cell
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