光学顕微鏡における超解像イメージングが、従来にない情報を生命科学の分野にもたらしている。本研究では、この分野をさらに発展すべく、生細胞蛍光1分子超解像顕微鏡法を超解像法へと発展させ、生細胞分子動態を定量し、分子機構を解明することを目的として、次の3項目を行った。 1.超解像1分子イメージングシステムの改良。これまでに得られた結果を基に、光軸方向走査の高精度化、照明光の均質化、結像系の最適化による、超解像分解能の高解像度化をさらに改良した。顕微鏡制御PCシステムを改良して効率化を進めた。10nm精度の超解像定量イメージングのために、時間による画像の位置ずれ補正を中心に高精度化を行った。 2.超解像多色同期1分子イメージング解析法の開発改良。超解像分子動態・相互作用解析において、上記1の改良されたイメージングシステムを用い、多色同期画像を用いた高分解能解析のために、細胞内分子間距離の定量法を改良した。光学顕微鏡の分解能限界とされる2点識別分解能0.61×開口数/波長の制約を受けることがないという、多色同期画像の利点を生かし、10 nm超分解能解析を可能にするためには、多色間画像の位置ずれ補正が重要であり、この点を中心に開発改良した。 3.生細胞シグナル伝達の超解像1分子イメージング・定量解析。1および2のイメージングシステムを用い、1分子超解像解析法とFRAP法との融合解析する手法を推進した。連携研究者との共同研究により、シグナル伝達活性化による生細胞の分子動態・分子間相互作用を観察した。多色対応の、リセプター・リン酸化酵素等のシグナル分子、actin等の細胞骨格、Caシグナルおよび関係分子、転写に関わる核内分子とGFP融合タンパク質を、適宜組合せ、細胞に複数種同時発現させ、観察解析し、分子動態に関する新しい描像を得た。
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