研究課題
1.光化学系Ⅱにおける末端キノン電子受容体QBの酸化還元電位を、光誘起フーリエ変換赤外(FTIR)法と電気化学計測を組み合わせることによって初めて測定した。さらに、水分解Mnクラスターを除去した際のQBの酸化還元電位も測定し、未処理試料の値と比較した。これらの結果から、Mn4CaO5クラスターとキノン電子受容体間の長距離相互作用による光化学系Ⅱの光保護機構の分子メカニズムが明らかとなった。2.光化学系Ⅱにおいて対称的に位置するチロシンYZとチロシンYDは、いずれもクロロフィルP680への電子供与体として働くが、YZの電子移動反応はYDのそれに比べて著しく速く、YZのみが水分解系への直接的な電子受容体として機能する。そこで、これらのチロシンの反応性の違いの原因を解明するため、FTIR法を用いて、YZおよびYDの光酸化の際のプロトン放出反応を調べた。その結果、YZは隣接するHis側鎖にプロトンを渡すのに対し、YDはプロトンを蛋白質外へ放出することが明らかとなった。このプロトン移動距離の顕著な違いがYZ、YDの反応速度の大きな違いを生じ、水分解反応の高い量子効率を実現させていることが示された。3. FTIR法を用いて、水分解Mnクラスターの近傍に存在する水分子ネットワークのOH伸縮振動バンドを観測した。さらに、QM/MM法による量子化学計算によって基準振動解析を行い、それらのバンドを帰属した。その結果、FTIRスペクトルに現れる~2800 cm-1付近の幅の広いバンドは、強い水素結合を持つ水分子および複数の水分子に非局在化したOH伸縮振動に由来することが明らかとなった。これらの水分子の振動が、水分解反応におけるプロトン放出および基質水分子の取り込みに重要な役割を果たすことが示された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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