研究課題
本研究では,酸素耐性をもつ複数の [NiFe]-ヒドロゲナーゼについてその酸素耐性の構造基盤を解明することを初期目的とする.また,これらの結果を元に酸素に阻害される金属酵素に酸素耐性機能を付与する普遍的な「しくみ」を見出し,酵素やモデル化合物の改変・設計に対して有用な情報を提供することを最終目標とした.さらに標準タイプ(酸素抵抗性をもつが耐性をもたない)酵素については,中性子結晶解析法に供するための巨大単結晶調製の検討を行った.下記にまとめる.1.新規酸素耐性[NiFe]-ヒドロゲナーゼのX線構造生物学: 好熱菌(Citrobacter sp. S-77)の精製法を確立し,得られた高純度の試料について結晶化に成功した.また,SPring-8においてX線回折実験を行い,酸化型結晶の2.0Å分解能の回折データの取得に成功し,現在構造解析を進めている.現時点で得られている電子密度では,Ni-Fe活性部位に一番近くに位置している[4Fe4S]クラスターが標準タイプのそれらとは異なる構造を示している.今後,さらなる構造精密化が必要である.2.標準型[NiFe]-ヒドロゲナーゼの中性結晶解析用巨大単結晶の調製: 本酵素を精製後に重水置換した後,結晶化相図の見直しを行った.その結果,蒸気拡散法による結晶化ドロップ中に1個の巨大結晶のみを再現性よく成長させる結晶化条件を取得した.本結晶は,1-5 立法ミリメートル程度の大きさをもち,しかもSPring-8の放射光X線を用いれば1.0Å分解能以上のX線回折能を示すものであった. 来年度は.中性子回折実験を行う予定である.
1: 当初の計画以上に進展している
今年度の最大の目標であった,下記の3点が達成されたことによる.1.Citrobacter sp. S-77由来の新規の酸素耐性[NiFe]-ヒドロゲナーゼの精製法が確立されたこと.2.新規酸素耐性[NiFe]-ヒドロゲナーゼの酸化型結晶の高分解能結晶構造解析に目処が立ったこと.3.硫酸還元菌由来の標準型[NiFe]-ヒドロゲナーゼの中性子結晶解析用の巨大単結晶の結晶化条件がほぼ確立できたこと.
平成27-28年度1.新規酸素耐性[NiFe]-ヒドロゲナーゼのX線構造生物学:Citrobacter sp. S-77由来の新規酸素耐性[NiFe]-ヒドロゲナーゼの酸化型結晶の構造解析を進める.また,水素還元型結晶および超酸化型結晶の結晶解析を進展させて,酸素耐性機構の一般則を確立する.2.硫酸還元菌由来の[NiFe]-ヒドロゲナーゼの中性子回折実験および中性結晶解析を進める.
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