当該年度は、分裂酵母の減数分裂において微小管が染色体の核内配置を転換させる分子機構を追究するために、減数分裂開始時における動原体の精製を試みる実験を中心におこなった。精製が難航していたため、まずは増殖期の細胞においてタンパク質精製が可能であるかを確認した。その結果、TAP精製法での精製収量が充分ではないことが分かったため、精製法の再検討をおこなった。具体的には、TrAP精製法を用いて精製の条件検討をおこなった。ある程度の収量は確保できたものの、質量分析をおこなうほどの収量を得られていないため、今後の条件検討(スケールの拡大など)が必要という結論に至った。 これに併せて、減数分裂の誘導・人為的制御の条件も検討した。減数分裂の進行を制御する株として、pat1-as株(薬剤によりPat1キナーゼの活性を阻害し、それによって減数分裂を人為的に誘導することが可能な株)を用いた。減数分裂を第一分裂開始時にて停止させて、その時期の細胞を同調的に大量調製することが狙いであるため、停止可能かどうかを確認した。その結果、薬剤によって同調させるためには微小管重合阻害剤を効果的に用いることが望ましいとの結論に達した。具体的には細胞集団の7割程度の細胞を同調的に減数第一分裂開始時に同調的に停止させることが可能であった。このとき、動原体に局在することが知られるAlp7タンパク質の局在を判定したところ、じゅうぶんな局在を示すことが確認できたため、この方法で第一分裂開始時に停止させた細胞集団から動原体タンパク質を精製すれば十分量の動原体因子が同定できると考察した。
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