研究課題/領域番号 |
25291043
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
岸本 健雄 お茶の水女子大学, サイエンス&エデュケーションセンター, 客員教授 (00124222)
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研究分担者 |
奥村 英一 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (00323808)
立花 和則 東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 准教授 (60212031)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞周期 / 細胞内情報伝達 / ホルモン受容体 |
研究概要 |
本研究では、ヒトデ卵を用いて、卵成熟誘起ホルモン(1-methyladenine, 1-MeAde)の卵表受容体を同定し、その刺激が卵細胞内でcyclin B-Cdk1の活性化に伝達される全容を明らかにすることを目的としている。本年度は、以下の点が判明した。 1.これまでの1-MeAdeアフィニティービーズを用いた解析から、1-MeAde受容体はRdz(Rendezvin)-GRL(GPCRのGRL101)複合体であるという作業仮説を得ている。その確証をめざして、それぞれを特異的に認識する抗体を作製した。これらを用いて、RdzとGRLのそれぞれが卵表層に局在していることを確認した。さらにGRL抗体の卵内微小注射は、1-MeAdeによる卵成熟誘起を抑制することを示した。これらは、Rdz-GRL複合体が1-MeAde受容体であることを強く支持している。 2.1-MeAde刺激により卵内ではまずAkt/PKBが活性化し、これがCdc25とMyt1を直接リン酸化して、cyclin B-Cdk1が活性化される。他方、閾値以下の1-MeAde刺激によっても、一旦、cyclin B-Cdk1は低レベルに活性化されるが、その活性に応じてフォスファターゼ(PPaseX;分子実体は不明)が活性化され、Cdc25とMyt1が脱リン酸化されて、cyclin B-Cdk1は不活性状態に戻ることが、予備的に判明していた。そこでまずは、この点を確証した。さらに、1-MeAde受容体にカップルしたGタンパク質から、PI3K-PIP3-Aktを介さずにPPaseXの抑制に向かう経路が存在する可能性が見えてきた。これらは、1-MeAde刺激における閾値設定の要に関わると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RdzとGRLそれぞれの特異抗体、およびGRL活性中和抗体が得られたことは、1-MeAde受容体の解析にとって大きな進展である。しかし、1-MeAde受容体として、Rdz-GRL複合体の必要十分性の証明については、一部、次年度に持ち越したといえる。 他方、PPaseXの抑制に向かう新規経路(1-MeAde受容体-Gタンパク質-PPaseX)の存在の可能性を見出したことは、予想を超えた新展開であり、1-MeAde刺激における閾値設定の解析に新規の視点を提供するものである。
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今後の研究の推進方策 |
Rdz-GRL複合体の、1-MeAde受容体としての必要十分性の証明に、まずは全力を注ぎたい。特に、Rdzの抑制による、1-MeAdeを介した卵成熟誘起の阻害;逆に、1-MeAdeなしでのRdzの直接刺激、あるいは1-MeAdeやRdzなしでのGRLの活性化による卵成熟の誘起、の実証が最も優先すると考えている。 他方、当初予定していた、各種Qドットを活用した1-MeAdeシグナル伝達の1分子イメージング(1-MeAde / Rdz-GRL複合体 / 3量体Gタンパク質 / PIP3形成)については、新規知見として何を目指すのかを、再考する必要があると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究代表者は、平成25年3月で東京工業大学を定年となり、同4月からはお茶の水女子大学で客員教授として、研究を継続している。これにともない、平成25年度の経費には、お茶大研究室のスタートアップに要する費用を予定していた。しかし、同年度の間、お茶大研究室ではスタート体制の整備に手間取りつつ研究を実施する一方で、東工大の旧研究室でも相当程度の実験を実施できた。そのため、お茶大研究室の本格的セットアップは平成26年度にずれ込むこととなり、物品費を主として次年度使用額が生じた。 上記「理由」の項に述べたような状況であり、次年度使用額は、当初の予定通り、お茶大研究室のセットアップに関連して使用する予定である。
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