ミトコンドリアは「細胞の発電所」とも呼ばれるATP産生の要であり、細胞はそのエネルギー需要によって、ミトコンドリアの量をダイナミックに増減させる。一方ミトコンドリアは、そのエネルギー変換の過程で生じる活性酸素種に直接曝されている。過去の知見から、余剰なミトコンドリアや酸化ストレスによるダメージを蓄積したミトコンドリアは丸ごと隔離され、分解コンパートメントであるリソソーム(酵母では液胞)に運ばれて除去されると考えられている。この機構はオートファジーの系を利用していることから「マイトファジー」と呼ばれる。
本年度の研究では、マイトファジー誘導時のミトコンドリアの断片化に働くタンパク質Om14と、ミトコンドリア分裂に機能する可能性のあるダイナミン様GTPaseの関与について解析した。出芽酵母においてマイトファジーが起こる際、分解基質を隔離するオートファゴソームの大きさ以下にミトコンドリアを小さくする必要がある。Om14欠損細胞では、野生型細胞で起こるミトコンドリアの断片化が顕著に抑制され、チューブラーネットワークを保つことがわかった。そこで、ミトコンドリア分裂に必須なダイナミン様GTPase Dnm1がミトコンドリアに局在しているかどうかを調べるため、Dnm1-GFPをOm14欠損細胞で発現させ蛍光顕微鏡で解析した。その結果、野生株同様、Dnm1-GFPはミトコンドリアへ正常に局在していることが明らかとなった。次に、他のダイナミン様GTPaseの欠損細胞におけるミトコンドリア断片化を調べた。その結果、エンドサイトーシスに機能するVps1や小胞体の形態形成を担うSey1を欠損した細胞でも、ミトコンドリアは断片化することがわかった。以上の知見は、ダイナミン様GTPase以外のタンパク質が、マイトファジー誘導時のミトコンドリア断片化に働く可能性を提起している。
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