研究課題/領域番号 |
25291046
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三原 勝芳 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (40029963)
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研究分担者 |
大寺 秀典 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40380612)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ミトコンドリア分裂 / ミトコンドリア融合 / ミトコンドリアダイナミクス / Drp1 / OPA1 / アポトーシス / cytochrome c |
研究実績の概要 |
ミトコンドリア(Mt)は外膜、内膜2つの膜に囲まれ好気的ATP産生、カルシウムシグナル伝達、アポトーシスに中心的な役割を果たす。網目状・チューブ状に細胞内に張り巡らされたMtは細胞の分化や病変に応じて分裂と融合を介してダイナミックに構造を変化させ機能変換をはかる。例えばアポトーシス時には分裂してクリステ構造内のCytochrome c (Cyt.c)を放出し死のカスケードを作動させる。哺乳類Mtの分裂・融合に関わる主要な因子は細胞質からリクルートされてMt分裂に関わるダイナミン様蛋白質Drp1、外膜の融合因子Mfn1とMfn2、内膜の融合とクリステ構造の維持に関わる内膜結合型OPA1である。我々は過去の研究でこれら因子の機能解に数々の成果を挙げて来たが、本年度は我々が明らかにしたMt外膜のDrp1受容体Mffと、他の研究室で見いだされた新たな受容体 Mid49、Mid51の機能分担を明らかにする目的で各種関連因子のノックアウト(KO)細胞を作成してストレスへの応答を解析した。その結果、驚いたことにDRP1-KOならびにMid49/Mid51-KO細胞はMff-KO細胞とは異なりアポトーシスに対して極めて強い耐性を持つ事が明らかになった。すなわち、Drp1-Mid49/51系がCJ構造と共役して細胞に於けるアポトーシスシグナルの必須の入り口として機能していることを見いだした(論文作成中)。これに加え組織特異的Drp1-KOマウスならびに全身、神経特異的Mff-KOマウスについても解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ミトコンドリアは内在性アポトーシスにおいてcyt.cを放出して細胞死を惹起する中心的役割をはたすオルガネラであり、かつその分裂反応が重要であることが知られていたが、反応機構の詳細は不明であった。我々の研究によってDrp1-Mid49/Mid51経路がクリステ構造の維持機構と共役してアポトーシスを調節するメインの経路であることが明らかになったことは、アポトーシスの調節の分子機構に大きなインパクトをもたらすと確信する。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Drp1-Mid49/Mid51系が内膜のクリステ構造維持の中心として機能するクルステ・ジャンクション(CJ)をどのように調節するのかを生化学的手法(架橋複合体の分離と構成成分の解析)それに関与する内膜因子は何かを明らかにする。 (2)Drp1-Mff経路で起るミトコンドリア分裂がどのような生理機能調節に関わっていいるのかを明らかする。様々な細胞応答(アポトーシスを除く)にDrp1に依存したMt分裂が関わることが知られている(例えば、MtのMAVS系による免疫応答、NLRP3系による炎症反応、MAPKを介した癌化の亢進など)ので、我々の作成した各種KO細胞を用いてこれらの応答に障害が惹起されているかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ミトコンドリア分裂の分子機構ならびに高次機能解析を継続するため。
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次年度使用額の使用計画 |
(1)Mid49/Mid51とミトコンドリア内膜のクリステジャンクションを繋ぐ未知の因子の同定。 (2)Drp1-Mff経路によるミトコンドリア分裂の細胞機能の解明。 (3)Drp1によるミトコンドリア分裂の阻害剤の検索。
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