研究概要 |
Rap1シグナルによるRAPLと Mst1/Mst2の相互作用によるインテグリンを介する接着動態と増殖・細胞死の統合的調節過程を明らかにするため、接着構造の可視化と追跡法の樹立と解析を検討した。LFA-1細胞内領域にhalotagを付加したコンストラクトをレンチウイルスに組み込み、LFA-1欠損マウス骨髄に感染導入後、LFA-1欠損マウスに導入した結果、30%程度のリンパ球がLFA-1陽性であった。また、人工膜にICAM-1とMHC分子、CD80分子を組み込み、免疫シナプスを確立した。MOT-IIマウス由来正常およびMst1欠損T細胞における免疫シナプスの形成を比較検討した。正常ナイーブT細胞と比較し、Mst1欠損T細胞は接着領域が減少し、SMACの形成が著しく障害されていた。また、アポトーシスを可視化・追跡するため、SCAT3可視化プローブを発現したマウスとOT-IIマウスを交配し、OT-II/SCAT3胸腺細胞を得たたのち、RIP-OVAマウス由来胸腺組織による選択過程の2光子イメージング法を樹立した。リンパ球にHippo経路の関与を調べるため、YAP, Mob1a/Mob1b, Lats, WW45, NDR1/NDR2の発現を調べたところ、AP, Lats, WW45の発現は検出できなかったが、Mob1a/Mob1b, NDR1/NDR2が発現していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リンパ球における接着の可視化についてレンチウイルスによるLFA-1欠損骨髄細胞への感染、移植の系を確立できた。人工膜による免疫シナプスの観察系が確立され、免疫シナプス形成過程のLFA-1/ICAM-1の結合動態を可視化追跡することが可能になり、Mst1欠損による障害過程が明らかになりつつある。また、胸腺細胞のアポトーシスをSCAT3を用いて2光子イメージングにより追跡可能になり、胸腺髄質の負の選択環境において胸腺上皮細胞との接着過程におけるアポトーシス過程が解析できるようになった。Rap1シグナルとHippo経路とのクロストークが生化学的手法によって明らかになりつつある。総じて初年度に計画したことはほぼ達成できている。予想外であった点としてβ2インテグリン欠損マウスについては免疫不全の程度が重度のため、繁殖および骨髄移植のキメリズムが良好なマウスをえることが難しかったこと、およびHippo経路になるYAP, WW45, Latsの発現が検出感度以下であった点である。これらについては方針を修正してRap1シグナルとHippo経路の関連を解析を行う。
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