研究実績の概要 |
哺乳類HippoであるMst1/Mst2は、Rap1、RAPL(Rassf5c)とによって活性化されナイーブリンパ球の動態を制御している。Rap1a/Rap1b, Mst1/Mst2の欠損、shRNAによるRAPLノックダウンを平面脂質二重膜による免疫シナプスを解析した結果、LFA-1/ICAM-1のリング状分布およびTCR/pMHCの凝集ともに障害された。ICAM-1の拡散を一分子計測によるLFA-1/ICAM-1結合測定の結果、高親和性結合がcSMAC近傍に集積する傾向があり、Rap1/RAPL/Mstのシグナルが必要であることが明らかになった。 胸腺細胞の選択にはRap1シグナルが必要であり、Rap1欠損、Mst1/Mst2欠損によって胸腺上皮細胞との相互作用、免疫シナプス形成が低下し、正および負の選択、制御性T細胞の産生が障害された。また選択過程ではplexinD1が胸腺細胞に発現し、そのRap1GAP活性によってRap1シグナルを抑制、胸腺細胞の移動および免疫シナプス形成を負に調節していることが明らかになった。末梢リンパ球について、細胞障害性T細胞(CTL)の分化・機能にMst1-Foxo1/3のシグナルが負に調節していることが見出された。 Mst1/Mst2シグナルの解析からNDR1/NDR2のリン酸化による活性化にRap1シグナルが関与していることが明らかになった。NDRの障害はMst1/Mst2欠損同様に免疫シナプスの形成を阻害し、高親和性LFA-1/ICAM-1結合を阻害したことからNDRとLFA-1の関連を今後、解析する必要がある。以上の結果より、ショウジョウバエで見出されたHippo経路は哺乳類免疫系では動態調節を介して増殖・分化、また成熟CTLの機能に関与していることが明らかになった。
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