研究課題
本研究では、脊椎動物モデルであるメダカを用いて、発生・成長過程における特定の細胞系譜のepigenetic codeをゲノムワイドで包括的に明らかにし、その成立機構を解明する。平成26年度では、以下の3つの研究を並行して行った。(1)未分化ステージ:発生重要遺伝子が修飾されることに必要な配列について、機械学習アルゴリズム(Support Vector Machine)を用いることで、各種の修飾状態に特徴的な配列を同定した(論文作成中)。現在同定された配列について、CRISPR/Cas法による特異的なメダカ欠失系統を作成した。現在F1での解析を準備中である。(2)器官分化に伴うepigenetic codeの変化:zic1/4 遺伝子座について、発生過程でのepigenetic code の変化を詳細に調べた。その結果、発生初期の未分化な状態では、20kb以上の広範囲にわたりDNA低メチル化状態であること、さらにこの巨大なDNA低メチル化領域の一部は分化した成体組織において縮小することを発見した。またトランスポゾンがzic1/4遺伝子座に挿入されているDa変異体で、その影響を解析した(Nakamura et al., 2014)。(3)エピジェネティック解析の試料作成:消化管の領域化および維持機構を解析するために、予定膵臓領域、内分泌腺、外分泌腺で蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックメダカ系統を作成した。予定膵臓領域、内分泌腺は、pdx1プロモーターの下流にGFP、一方外分泌腺では、ptf1aプロモーターの下流にDsRed cDNAを結合したコンストラクトを用いた。系統樹立により、魚類で内分泌腺、外分泌線の発生がリアルタイムで観察できる系が確立され(論文リバイス中)、膵臓発生における重要遺伝子のepigenetic code の変化を詳細に調べることが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
初期胚のepigenetic codeの解析(DNA methylation H3K4me1, H3K4me2, H3K4me3, H3K27me3, H3K27ac)がほぼ終了し、それらの決定に関与するDNA配列を機械学習アルゴリズム(Support Vector Machine)を用いることで同定することができた。同定された配列群について、今後、分子メカニズムの研究をスタートさせる。
Support Vector Machineが予測した配列群の生物学的意義はまだわかっていない。それを研究する最初のステップとして、転写因子等の結合を、DNaseI hypersensitive siteのデータから調べる予定である。また、zic1/4については、epigenetic codeの成立に必須な配列およびそれらとプロモーター間のDNA接触状況などを5CやHi-C法で解析する予定である。また、pdx1、ptf1aトランスジェニックを用いて、膵臓の各発生段階での細胞を分集する実験系を確立する予定である。
物品費として平成27年度に3,000,849円を繰越している。その理由はエピジェネティック修飾に重要と思われる配列の変異体を用いた解析が予定より遅れ、次年度に実施予定のためである。当初、変異体ではG0で影響が出ると思われていたが、予備的解析では変化が見つかっておらず、F1での解析が必要と判断した。
機械学習アルゴリズムで同定された配列について複数の変異体系統がG0として確立できている。F1世代がH27年度に得られる予定である。繰越した物品費は、F1個体のエピジェネティック修飾をゲノムワイドで解析するために使用される。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Development
巻: 141 ページ: 2568-80
dev.108548 [pii]10.1242/dev.108548
http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/hassei/