研究課題/領域番号 |
25291048
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武田 洋幸 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80179647)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / メダカ / DNAメチレーション / ヒストン修飾 / ゲノム |
研究実績の概要 |
脊椎動物モデルであるメダカを用いて、発生・成長過程における特定の細胞系譜のepigenetic codeをゲノムワイドで包括的に明らかにし、その成立機構を解明するため、平成27年度は、主に以下の2つの研究を行った。 (1)未分化ステージ:発生重要遺伝子が修飾されるのに必要なcis配列を、機械学習アルゴリズム(Support Vector Machine, SVM)を用いることで、各種の修飾状態に特徴的な配列(6-mer)を同定した。現在同定された配列の幾つかについて、CRISPR/Cas法による特異的欠失系統を作成してF1で解析を行ったが、修飾状況に影響を及ぼす例はまだ見つかっていない。一方、SVMが予測した低メチル化領域を規定すると思われる配列の分布を詳細に解析した結果、nucleosomeの分布と深くリンクしていること、それらが遺伝的多型を示すメダカ2種の近交系Hd-rR、HNI間で保存されていることが判明した。これらについて現在論文作成中である。更に、メダカ2種の近交系Hd-rR、HNI間でゲノム配列やDNAメチル化パターンの比較をゲノムワイドに行うことで、HMDを規定するコンセンサス配列も同定した(Uno et al., in press) (2)エピジェネティック解析を目指したTg系の確立:消化管の領域化の確立および維持機構を解析するために、予定膵臓領域、内分泌腺、外分泌腺で蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックメダカ系統を作成した。予定膵臓領域、内分泌腺は、pdx1プロモーター下流にGFP、一方外分泌腺では、ptf1aプロモーター下流にDsRed cDNAを結合したコンストラクトを同時に持つことから、魚類で内分泌腺、外分泌腺の発生がリアルタイムで観察できる系が確立され(Ohtsuka et al., 2015)、現在FACSでの蛍光細胞の分集条件を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期胚のepigenetic codeの解析(DNA methylation H3K4me1, H3K4me2, H3K4me3, H3K27me3, H3K27ac)がほぼ終了し、その情報を元に機械学習アルゴリズム(Support Vector Machine)を用いることで、各epigenetic修飾を規定する重要な配列(6-mer)を同定することができた。また、DNA低メチル化を規定する配列がnucleosomeの分布と深くリンクしていることを見出したことは、nucleosomeの配置の予測が不可能とされた脊椎動物での常識を覆すものであった。また、多型を示すメダカ近交系Hd-rR、HNI間でのゲノム配列、エピゲノム情報の比較解析から、メダカゲノムにおけるDNA低メチル化ドメイン(HMD)の規定に関わるDNA配列候補を得たことは今後の研究のスタートとなった。
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今後の研究の推進方策 |
Support Vector Machineが予測された配列、2種のメダカ近交系間の比較で得たられた配列の生物学的意義はまだ実験的に検証されていない。今後引き続きトランスジェニック法での解析を試みる。一方確立したpdx1、ptf1aトランスジェニックから、膵臓の各発生段階での細胞を分集する条件検討を急ぎたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度中、研究の過程で膵臓の内分泌細胞であるΒ細胞の外的障害に対して、メダカの2次ランゲルハンス島が反応してその細胞数を増すという新たな現象を発見した。この現象は器官再生現象の理解に不可欠と考えて、さらなる実験のために基金の一部を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
トランスジェニックメダカの飼育と実験のための消耗品、試薬を購入する。
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