研究実績の概要 |
本研究では、脊椎動物モデルであるメダカを用いて、発生・成長過程における特定の細胞系譜のepigenetic codeをゲノムワイドで包括的に明らかにし、その成立機構を解明する。平成28年度では、繰越した研究費を用いて、以下の実験を行った。 (1)エピジェネティック解析を目指したTg系の確立:平成28年度では膵臓のβ細胞の再生過程のエピジェネティック修飾変化を調べるために、Nitroreductase (NTR)/Metronidazole (Mtz) システムを応用したTgを完成させた。このTgでは、インシュリンプロモーターの下流にEGFP-NTRを挿入して、β細胞をGFPで可視化すると同時に、Mtz処理により、NTRを発現するβ細胞のみを除去(NTRにより細胞毒性を有するMtz代謝産物が生成される)することができる。この魚を用いて、β細胞除去後の回復過程を観察した。その結果、メダカのβ細胞の回復は除去後速やかに起こること、さらに除去処理を行った個体ではβ細胞の数が逆に増加することを見出した(Otsuka and Takeda, 2017)。 (2)メダカ初期胚の低メチル化領域の成立機構:平成27年度までに、機械学習アルゴリズム(Support Vector Machine)を用いてメダカ胞胚期におけるDNA低メチル化領域に特異的に存在するDNA配列を見つけていた。今年度はさらに、これらの配列はゲノム上に周期的に存在し、ヌクレオソームのリンカー部分に一致することが明らかになった。これまで、ヌクレオソームがどのDNA配列を好むかはゲノム全体で解析されてきており、ゲノム領域による違いは議論されていなかった。しかし、今回の結果はクロマチンのエピジェネティックな環境によって、ヌクレオソームのDNA配列への依存性が異なることを示唆している。この成果は現在論文にまとめ、投稿中である。
|