研究課題/領域番号 |
25291053
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
中村 肇伸 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (80403202)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 全能性細胞 / リプログラミング / Klf17 / Btg4 |
研究実績の概要 |
哺乳類の成熟卵子は、最終分化した細胞のエピゲノム情報をリプログラミングし、全能性を再獲得させる能力を有している。申請者は、in silico screeningにより全能性を有する初期の着床前胚に特異的あるいは高発現する遺伝子としてKlf17およびBtg4をはじめとする7個の遺伝子を同定し、その機能の解析を行ってきた。 Klf17については、前年度までに受精卵から2細胞期までの間の核に局在すること、メスのKlf17ノックアウトマウスから得られた受精卵では、胚盤胞までの発生が著しく阻害されること、を明らかにしている。今年度は、メスのKlf17ノックアウトマウスから得られた2細胞期胚の遺伝子発現を網羅的に解析し、Klf17ノックアウトでは、転写が著しく低下することを明らかにした。これらのことから、Klf17は正常発生に必要な母性効果遺伝子であり、受精後に生じる胚性遺伝子の活性化に必要であることを明らかにした。 Btg4については、前年度までに受精卵から4細胞期までの間の細胞質に局在すること、mRNAの分解に関与するCnot7と相互作用すること、を明らかにしている。今年度は、ノックアウトマウスの解析から、メスのBtg4ノックアウトマウスが不妊になること、メスのBtg4ノックアウトから得られた受精卵では、胚盤胞までの発生率が著しく阻害されること、を明らかにしていた。また、未受精卵と受精卵のmRNA量を定量したところ、メスのBtg4ノックアウトマウスから得られた受精卵では、今回調べたほとんどの母性mRNAの分解が阻害されていることを明らかにした。これらのことから、Btg4は正常発生に必要な母性効果遺伝子であり、受精後の母性mRNAの分解に機能することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、平成26年度の交付申請書の研究計画に記載したすべての実験を実行することができた。また、ノックアウトマウスの解析において、Klf17とBtg4の両方が初期発生に重要な母性効果遺伝子であることが明らかにできた。さらに、Klf17とBtg4はそれぞれ受精後に生じる胚性遺伝子の活性化と母性RNAの分解に機能することを明らかにした。これまでに、胚性遺伝子の活性化に関与する分子の報告はあるものの、そのすべてが間接的に働く分子である。また、これまでに、Btg4のように受精後の母性RNAの分解に直接関与する報告はない。したがって、本研究の成果は受精後に生じるリプログラミングの研究に新たな展開をもたらすことが大いに期待できる。これらのことから、本研究は「当初の研究計画以上に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Klf17とBtg4の研究成果を論文にまとめて発表する。また、すでにKlf17やBtg4と同様に全能性細胞で特異的に発現する遺伝子であるTrim61、Pramef12、Rfpl4、Zbed3、およびZc3h6を同定している。そこで、これらの特異的抗体とノックアウトマウスを作製することにより、生体内での機能を明らかにする予定である。
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