研究課題/領域番号 |
25291056
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馳澤 盛一郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (40172902)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オルガネラ / 細胞骨格 / 細胞壁 / イメージング / 画像定量解析 |
研究実績の概要 |
これまでタバコBY-2細胞などを材料に細胞内構造をラベルした細胞(可視化細胞)やイメージング・画像定量解析およびシミュレーションの手法を独自に開発して、細胞骨格等の動態や細胞形態形成の画像情報処理による解析を行ってきた。これらの経験をもとに、本申請研究では、モデルとしてのBY-2細胞から複雑な形態をとるシロイヌナズナ葉表皮細胞の形態形成過程における細胞形状と細胞連結様式を組織レベルで可視化した。並行して、表層微小管、アクチン繊維、分泌小胞などの細胞内構造の動態のイメージングを実施して、これらの細胞内構造が制御する葉表皮組織における細胞形態形成機構を多角的に検討した。具体的には、葉表皮細胞や孔辺細胞に様々な外的要因(例えば細胞壁分解酵素や高CO2処理)による形状変化を試み、さらに画像解析により細胞形状を定量的に評価し、濃度依存性の検討を行った。表皮細胞壁の形状を大規模に(全45枚の子葉で >38,000細胞)解析し、この表皮細胞画像セットから、特徴間の関係を検討し、細胞面積・アスペクト比・稠密度を表皮細胞の成長様式を効率的に評価できる指標セットと考え、これらに基づくクラスタリング解析を実施した。一連の解析から、(1) セルラーゼ処理により播種後4日目までは子葉面積拡大が抑制されるものの、7日目になると葉面積は補償されること、(2)主に播種後4日目以降に子葉上部で起こる表皮細胞の湾曲形成がセルラーゼ処理で抑制され、本来は子葉の基部で観察される平滑に伸長成長した表皮細胞が子葉上部にも出現することを新たに見出した。また関連の共同研究として、理化学研究所環境資源科学研究センターの豊岡公徳上級研究員らのグループ,日本女子大学理学部の永田典子教授らのグループとの協同で,透過型電子顕微鏡画像から細胞内構造(膜系やオルガネラ)を精査する新しい画像解析手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の通り、全体として研究は計画通りに順調に進行している。27年度が最終年度に当るが、27年度中に当初の目的を完遂見込みであり、さらに本研究から派生した研究も発展しつつある。また、これらの成果の一部は既にNature Communications誌、PLoS ONE 誌など評価の高い専門誌に掲載されており、さらに多くの成果報告が発表予定である。このように、本計画に関しては当初計画していた以上の成果が得られているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までと同様に細胞膜の撮像と画像解析を継続的に実施するとともに、GFP-tubulin発現株などを用いて実施した表層微小管などの細胞骨格構造の撮像および解析をまとめる。細胞骨格の観察には高感度での蛍光検出が可能なスピニング式共焦点レーザー顕微鏡システムとともに細胞骨格に伴って運ばれる小胞の検出には全反射顕微鏡を利用する。シロイヌナズナ葉の多重孔辺細胞誘導系については引き続きその要因を解析する。高CO2(1000 ppm)処理による分布変化の実験系についてはデータのとりまとめを行い、孔辺細胞の分布様式変化と信号伝達様式との関連を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題研究の最終年度の27年度において大がかりな解析と取り纏めに多大な作業量が予想され、その実行に要する人件費、その他経費を基金の範囲で次年度使用額とした。また、研究成果の発表について掲載費などの費用にも考慮した。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように最終年度において、その実行に要する人員の人件費等を投入し、研究の淀みなき遂行により高い完成度の実績を目指すものである。
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