研究課題
本研究は、緑藻クラミドモナスが示す走光性の正か負かが、光合成電子伝達のステート遷移に応じて変化するか否かを検証することを主な目的として行ったものである。研究初期に得られた「ステート1で正の走光性」「ステート2で負の走光性」という結果が、残念ながら再現性に乏しいことが2年め、3年めの前半までの研究で明らかになった。ステート誘導(青色光または遠赤外光照射)が、光合成以外に、光受容などにも影響を及ぼしていたため、結果が安定しなかったことが原因として考えられる。つまり、この問題に迫るには、ステート遷移を人工的に誘導する方法でない別の手法を用いる必要があることがわかった。一方、興味深いことに、走光性符号が偏ることを指標として新しいミュータントを単離したところ、符号が正に偏りやすい1種が光合成活性に野生株と大きな差のあるものであった。これは、結果的に走光性符号がやはり光合成の電子伝達様式の影響を強く受けるということを意味している。特に、酸素発生量の増加や、活性酸素の生産量の増加を示唆する結果も得られた。これは走光性が正に偏りやすいというミュータントの表現型と我々のこれまでの研究に照らしても整合性のある結果である。現在、原因遺伝子の特定を急いでいる。上記の結果は、細胞運動の方向性制御という基本的な問題への理解を深めると同時に、光合成活性を利用したさまざまな産業(藻類オイル、食物生産など)に関する基礎知識という点でも貢献できるシーズになると期待している。今後はこのミュータントのステート遷移の様式を調べるなどして、本研究計画の当初得られた結果を説明することを目指す。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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