研究課題
葉緑体とミトコンドリアの遺伝子発現をコントロールする鍵因子であるpentatricopeptide repeat (PPR)タンパク質の分子機構の解明を目指した。本年度は以下のことを明らかにした。ヒメツリガネゴケのPPRタンパク質のうち、遺伝子ノックアウト(KO)株が顕著な生育遅延を表したPpPPR_4 について詳細な分子的解析を行った。その結果、PpPPR_4が葉緑体局在タンパク質であり、KO株では光合成の光化学系Ⅱのクロロフィル蛍光収率が野生株レベルの60%に低下していることを明らかにした。さらに、葉緑体ゲノムコードのタンパク質レベルが KO株で顕著に減少している一方、核コードの葉緑体タンパク質レベルが野生株とKO株で同程度であることを見出した。また、多くの葉緑体タンパク質遺伝子の発現レベルがKO株で上昇していることを観察した。これに対して、葉緑体リボソームRNAの蓄積レベルおよびRNAプロセシングパターンは野生株とKO株で顕著な差異は観察されなかった。同様に全葉緑体tRNAの蓄積レベルを調べたところ、リボソームRNA遺伝子オペロンから転写されるイソロイシンtRNAの蓄積レベルがKO株で顕著に減少していることが観察された。イソロイシンtRNAはグループⅡイントロンをもつtRNA前駆体からスプライシングをへて産生されるが、KO株ではスプライシング効率が顕著に低下していた。最後に、PpPPR_4がイソロイシンtRNA前駆体のグループⅡイントロン内のドメインⅢに強く結合することをRNA結合実験により明らかにした。以上の観察結果から、 PpPPR_4がイソロイシンtRNA前駆体イントロンのスプライシングに働く特異的因子であると結論し、これをPTSF1 (plastid tRNA splicing factor 1)と命名した。以上の成果はPPRタンパク質の分子機能に関する新しい知見であり、当該分野の研究に大きく貢献するものである。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Plant Signaling & Behavior
巻: 11 ページ: e1116661
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http://www.bio.nagoya-u.ac.jp/paper/index.html
http://www.gene.nagoya-u.ac.jp/~sugita-g/ronbun.html