研究課題/領域番号 |
25291066
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
川口 正代司 基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 教授 (30260508)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 根粒形成 / オートレギュレーション / 遠距離シグナル伝達 / CLEペプチド / 翻訳後修飾 / HAR1 / 根由来シグナル / シュート由来シグナル |
研究概要 |
・化学合成したCLE-RS1/2ペプチドを100μM以上の濃度でミヤコグサのシュートから与えても根粒形成の抑制効果が全く検出されないことから、CLE-RS1/2ペプチドは翻訳後修飾を受けて活性型になることが推測された。そこで、CLE-RS1/2遺伝子を過剰発現させたシロイヌナズナの実生とミヤコグサ毛状根を液体培養し、それぞれ培養液中のペプチド分画をLC-MSとLC-MS/MSで解析したところ、両者において成熟型CLE-RS2ペプチドが検出された。成熟型CLE-RS2は13アミノ酸よりなりN末より7番目のヒドロキシルプロリンにアラビノース鎖が結合していた。共同研究者の松林教授は[Ara3]CLE-RS糖ペプチドを化学合成し、それを用いて根粒の抑制効果を解析した。その結果、 [Ara3]CLE-RSペプチドは100 nMの濃度で根粒形成をシステミックに抑制した。またその抑制はhar1変異体では観察されなかった。以上のことから、CLE-RSペプチドの生理活性にはアラビノース鎖が必要であり、それはHAR1を介して根粒形成を抑制することが示された。 ・篠原助教らの協力を得て、放射性同位体標識した[Ara3]CLE-RSペプチドを用いてHAR1受容体との結合実験を行った。HAR1の細胞外ドメインをタバコBY-2細胞で発現させ、光アフィニティ法で[Ara3]CLE-RSペプチドと反応させたところ両者の結合が示された。またその結合にはアラビノース鎖とCLEペプチドの配列特異性が必要であることが示された。 ・ミヤコグサの実生を用いて、「シュート由来シグナル」のバイオアッセイ系を構築することに成功した。 ・「シュート由来シグナル」の下流で機能するTMLとNodファクターシグナル伝達系の構成因子NSP1, NSP2, NINとの分子相互作用を調べたが、相互作用は検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CLE-RS2の成熟型の分子構造の概要が解明されたのは大きな進展である。[Ara]CLE-RSペプチドがシステミックに根粒形成を抑制すること、根からシュートへと遠距離移行しうること、HAR1受容体の細胞外ドメインと直接結合することを明らかにし、Nature Communicationsに論文として報告することができた。 一方、ミヤコグサの実生を用いた「シュート由来シグナル」のバイオアッセイ系の構築も進展し、理化学研究所の榊原均博士らとの共同研究による網羅的なホルモン分析等からその候補物質を見つけ出すことに成功した。TMLについては、既知のNodファクターシグナル伝達系に位置する転写因子との相互作用は観察されなかったが、「シュート由来シグナル」の候補物質によるシステミックな根粒形成の抑制にTMLが必須であることが、tml根粒過剰着生変異体を用いた解析から明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
「シュート由来シグナル」の下流で機能するTMLの分子機能解析を進める。また、tml-4 変異体では帯化などのSAM機能に関連する表現型が見られたことから、AONに加えてシュートにおけるTMLの役割を解析し、根粒形成とSAM制御系との関連性を遺伝学的に明らかにする。 ミヤコグサCLE-RS1/2遺伝子をダイズ毛状根系で導入し、修飾された成熟型CLE-RSペプチドをさらに探索する。ダイズに根粒形成を抑制するレベルの硝酸を与えて、導管液から成熟型CLEペプチドの検出を試みる。「シュート由来シグナル」の候補物質については、理研の榊原均博士との共同研究を継続し、候補物質の生理活性やシュートから根への遠距離移行を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、ミヤコグサより見いだしたCLE-RS1, CLE-RS2遺伝子の機能解析を行う予定であったが、さらにRNA-seq解析とインフォマティクス解析から新たに5~7個のCLE遺伝子が見つかった。それらCLE遺伝子の発現及び機能解析を行うために、次年度に使用額が生じた。 H26.4 ----> H26.8 新たに見つかったミヤコグサCLE遺伝子の発現と機能解析 H26.9 ----> H26.11 研究結果の分析・追試実験 H26.12 研究成果の取りまとめ
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