研究課題/領域番号 |
25291067
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
長谷部 光泰 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 教授 (40237996)
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研究分担者 |
村田 隆 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 准教授 (00242024)
玉田 洋介 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (50579290)
石川 雅樹 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (00586894)
西山 智明 金沢大学, 学際科学実験センター, 助教 (50390688)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 幹細胞化 / 幹細胞 / リプログラミング / 転写因子 / ヒメツリガネゴケ |
研究概要 |
(1) STEMINパラログ遺伝子の機能解析:STEMINL1およびSTEMINL2遺伝子のプロモーターにGFP-GUS融合遺伝子を連結させたコンストラクトをヒメツリガネゴケに導入し、それらのプロモーター活性を調べた。STEMIN遺伝子のプロモーターと同様、切断葉および原糸体での幹細胞化過程でそれらのプロモーターの活性が上昇した。またSTEMIN遺伝子破壊株では、幹細胞化に遅れはなかったが、STEMIN、STEMINL1、STEMINL2遺伝子の3重破壊株で幹細胞化が遅れた。一方、STEMINL1およびSTEMINL2遺伝子をエストロジェン発現誘導系を用いて茎葉体でそれぞれ発現させたが、幹細胞化を誘導しなかった。以上のことから、STEMINパラログ遺伝子も幹細胞化に関与しているが、その機能はSTEMINと異なることが示唆された。 (2) STEMINの標的遺伝子および結合因子の探索: STEMIN遺伝子にYFP遺伝子をノックインしたラインを作製したが、幹細胞化過程でYFPの蛍光は観察されなかった。また、エストロジェン発現誘導系を用いてSTEMIN-YFPタンパク質を発現誘導したが、予想外にもSTEMIN-YFPタンパク質の蓄積レベルが低いことが分かった。STEMINの推定アミノ酸配列を調べると、ユビキチン-プロテアソーム分解系の標的配列であるD-ボックスが存在していた。そのためSTEMINタンパク質は不安定であると考えられたので、STEMIN-YFPタンパク質を安定化させるための条件検討を行い、クロマチン免疫沈降シークエンスのための実験条件は、ほぼ確立した。 (3)トランスクリプトーム解析および幹細胞化に関わる他の因子との関連性: 今後の実験を進める上でSTEMINタンパク質の安定化が優先課題であるため、本年度はSTEMIN-YFPタンパク質の抽出条件検討に集中した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
STEMINパラログ遺伝子の機能解析は、研究実施計画通りに進んだ。一方、STEMINタンパク質が予想外にも不安定であることが分かったが、考えられる原因の一つを突き止めることができた。また、STEMIN-YFPタンパク質の抽出条件も検討し、良好な結果が得られているので、次年度以降、STEMINタンパク質の標的遺伝子および結合因子の探索を進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
大学院生である森下美生(研究協力者)、村田、玉田、石川が実験を、西山がインフォマティクス解析を行う。また長谷部と石川が研究を総括する。 (1) STEMINの標的遺伝子および結合因子の探索 平成25年度に引き続き、STEMIN-YFPタンパク質の抽出条件を最適化するとともに、STEMINのD-ボックス配列に変異を入れた安定型mSTEMIN-YFPタンパク質を発現誘導できる形質転換体を作製する。mSTEMIN-YFPを茎葉体で発現させ、幹細胞化を誘導することを確認した後、GFP抗体を用いた免疫沈降反応によって、mSTEMIN-YFPと結合する因子を回収し、質量分析法によって同定する。候補となる因子については、in vitroでの共沈実験、in vivo でのBiFC実験を行い、野生型のSTEMIN との相互作用することを確かめる。また、候補因子をコードしている遺伝子を欠失させ、その表現型を調べ、STEMINとの関連性を推定する。 (2) 幹細胞化における STEMIN遺伝子制御ネットワークの解明 平成25年度で、クロマチン免疫沈降シークエンスのための実験条件がほぼ確立したため、茎葉体にSTEMIN-YFPを発現させ、GFP抗体を用いてクロマチン免疫沈降シークエンスを行い、STEMIN-YFPが結合するゲノムDNA領域の特定を進める。また平行して、STEMIN-YFPを茎葉体で誘導した後、経時的に茎葉体を採取し、RNA-seqも合わせて行う。これらの結果に基づいてSTEMINの直接の標的遺伝子を探索する。また、葉切断後のRNA-seqデータと比較するとともに、これまでに見つけた幹細胞化制御因子およびSTEMINパラログとの関連性について考察し、STEMINを中心とした遺伝子ネットワークを推察する。 (3) 上記の解析結果に基づき、STEMINによる幹細胞化誘導機構を推察し、論文として公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額の2,572,685円は、クロマチン免疫沈降シークエンス、RNA-seq、および質量分析を行うための分子生物学実験用試薬の購入、および、それらの解析には大量のサンプル回収が必要なため、技術支援員の雇用経費として支出する予定であった。また、その研究成果を国内外の学会で発表する予定で旅費を計上していた。しかしながら、STEMINタンパク質が非常に不安定であることが判明し、上記の実験を行う前にSTEMINタンパク質の抽出条件を検討する必要となったため、当該研究費が生じた。 平成25年度の研究成果に基づいて、幹細胞化におけるSTEMINの機能を明らかにするためのクロマチン免疫沈降シークエンス、インタラクトーム解析、トランスクリプトーム解析を進める。そこで以下に示すように、物品費、技術支援員の雇用費に当該研究費(計2,572,685円)をあてる。 (内訳)物品費:クロマチン免疫沈降シークエンス、インタラクトーム解析、トランスクリプトーム解析のための分子生物学実験用試薬に1,972,685円を計上する。雇用経費:上記の解析には、技術支援員による大量のサンプル回収が必要になるため、雇用経費として600,000円を計上する。
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