研究課題/領域番号 |
25291069
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
稲葉 一男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80221779)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カラクシン / 精子 / オピストコンタ / ダイニン / 鞭毛繊毛 / 進化 / 神経カルシウムセンサー / 形態形成 |
研究概要 |
本研究は、以下の2つの研究項目を進めることを目的とする。研究項目1:微小管およびダイニン結合を有するカラクシンの分子的特性、研究項目2:繊毛の協調運動と形態形成に果たすカラクシンの役割。 本年度は研究項目1について、ホヤカラクシンがカルシウム存在下でダイニン重鎖と相互作用することをFRET解析から明らかにした。また、カラクシンがと微小管との相互作用がカルシウム存在下で弱くなること、この相互作用にタンパク質のリン酸化は関与しないことを明らかにした。ただしリン酸化に関してはcAMPを合成するアデニリルサイクレースのうち可溶型サイクレースを阻害した場合の精子の波形変化がカラクシンを阻害したときと酷似していることから、今後さらに詳細に検討する必要がある。さらに、ツボカビ遊走子にカラクシンが存在し、カラクシンがオピストコンタ特異的に獲得された分子であることを明らかにした。また、遊走子が見せる特徴的なターン運動を詳細に観察し、この変化がカルシウム依存的に起こることを明らかにした。カラクシンの直接関与については今後の課題である。研究項目2においては、ウニ胚にカラクシン発現を阻害するモルフォリノオリゴを導入した場合に、繊毛運動についてはわずかに屈曲の度合いが阻害される程度で振動数には影響しないこと、繊毛間の協調的運動が阻害され胚全体の指向的運動が阻害されること、原腸陥入が阻害され正常な腸が形成されないことが明らかになった。また、カラクシンを欠損したマウス胚の作製を行い、精子の受精能力が著しく低下することと後期発生異常が見られることを予備的に確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究項目に関して、当初予定していた成果が得られており、一部論文として公表することができる準備が整っている。。アデニリルサイクレースの機能解析については論文をすでに投稿している。カラクシンと微小管との相互作用に関しては、概ね再現性の高い結果が得られておいる。鞭毛軸糸を用いた解析を今後行なうことにより、再構成系で得られた結果を確証すべく研究を進めたい。カラクシンとリン酸化の関係に関しては現在不明確であり今後の研究が必要である。また、ウニ胚におけるカラクシンの機能に関しては明確な結果が得られているが、形態形成、特に幼生の腸の形成に必須か否かについて、内胚葉マーカーを用いた検証が今後必要であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目1「微小管およびダイニン結合を有するカラクシンの分子的特性」に関しては、大腸菌発現カラクシンを用いた構造解析とダイニン重鎖との相互作用に関してさらに詳細に解析し、次年度中の論文公表を目指したい。分子系統学的考察に関しては、その一部を次年度中に公表すべく論文作成を進めている。リン酸化とカルシウム結合の関係に関しては、分子再構成系のみならず鞭毛軸糸内での状態解析も含め、次年度に検討する必要がある。研究項目2「繊毛の協調運動と形態形成に果たすカラクシンの役割」に関しては、幼生腸の形成に関して内胚葉マーカーを用いた検証を行なった後に、次年度中に論文発表する計画である。ホヤ胚形成におけるカラクシンの機能に関しては、研究が進展しておらず、カラクシン欠損マウスの表現型解析とともに次年度以降進める必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗状況が当初の計画とずれ、研究項目2の一部の課題において組み換えカラクシンとカラクシン欠損マウスの機能解析を行なう研究員の雇用が次年度に必要になった。このため、当該年度では使用せず次年度に使用することとした。 翌年度分として請求した研究費とともに、研究員1名の雇用に使用する。このため、当初予定していた消耗品と旅費については減額して研究を進める。
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