研究課題
選択衝動性は、ヒトを含む多くの動物を対象に選んでも、同じ手続きによって経済的意思決定の行動特性を評価し隠れた認知神経機構を解析することができる、重要な行動指標である。報酬価値を遅延時間によっていかに割り引くか、その強さを持って一元的に評価できるからである。具体的には「小さくて近い餌」と「大きいが遠い餌」の二者択一を与えて、動物やヒトが前者を選ぶ頻度の割合をもって衝動性を評価する。我々はこれまでふ化直後数日のヒヨコを対象とした神経行動学的な研究を行い、競争採餌の経験が衝動性を更新することを報告した。他方、競争者が存在すると採餌者が餌へ向かう時の労働投資量(エフォートコスト)が著しく高まる。衝動性発達と労働投資量亢進の神経機構を解析することを通して、「報酬量」「近さ」「コスト」「リスク」「公共情報」など多様な価値とその脳内機構を解析することを期待して、本研究を進めた。特に大脳線条体の側坐核とその近傍領域、さらに弓外套皮質(哺乳類の扁桃体皮質部あるいは前頭野に機能的に相当すると考えられている)に着目した。前者の局所破壊が選択衝動性を高め、後者の破壊がエフォートコスト回避選択を高めることが、先行する研究によって判明していたからである。本研究期間に、以下の結果を得た。(1)競争的文脈は線条体ニューロンの手がかり期活動(餌と連合した視覚的手がかりに反応するもの)を選択的に抑制する。(2)労働投資量の社会的促進は中脳ドーパミン系の選択的枯渇によって損なわれない。(3)社会的促進は弓外套皮質の破壊によって著しく損なわれる。(4)競争採餌が選択衝動性を亢進するためには、得られる報酬にリスクが伴い、毎回得られる餌量が確率的にしか知り得ない状況が必要である。(5)社会的促進に伴い報酬と餌場滞在時間の間の対応関係が正確となる。競争採餌のもとで、公共情報は最適採餌を可能にする。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Behavioural Brain Research
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Behavioural Processes
巻: 140 ページ: 127-132
10.1016/j.beproc.2017.04.020
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