研究課題/領域番号 |
25291072
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
真行寺 千佳子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80125997)
|
研究分担者 |
北島 健 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (80192558)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 生体分子 / 生理学 / 細胞 / アクチン / カルシウム / 膜ラフト |
研究実績の概要 |
精子は,卵からの誘因物質に引き寄せられるようにして,遊泳方向を巧みに制御し,受精に至る。ウニなどの精子に見られる遊泳方向の制御は,カルシウム濃度に依存した鞭毛運動の変化によって引き起こされる。しかし,膜タンパク質を介する細胞内カルシウム濃度の調節,およびカルシウムによる鞭毛運動の制御の機構は,ほとんど解明されていない。本研究では,カルシウム反応を「機械刺激により誘導」するという技術的ブレークスルーにより,遊泳する精子の挙動から,カルシウム動態の高精度の解析を実現し,カルシウムの流入と排出についての膜直下のアクチン繊維を介した新しい制御モデルを提案し,その検証実験を行い,カルシウムによる鞭毛運動制御の方向性を示すことを目指している。これまでに明らかにした機械刺激に依存した精子の遊泳方向制御過程の解析から,カルシウム排出過程の早い時期にアクチン繊維の存在が反応の制御に関与する可能性が,明らかとなった。さらに,このアクチン繊維の関わるカルシウム濃度の制御系における役割の検討を行い,カルシウム排出が,排出に関わる膜タンパク質の単独の機能ではなく,いわゆる脂質ラフト形成を伴った制御によることを明らかにするため,ラフト関連脂質の一つとされるスフィンゴミエリンの蛍光体を用いてラフト動態を可視化することによりこの解明をを実現するという戦略で実験を開始した。その結果,カルシウム動態に関わる膜タンパク質が移動していると思われる画像を捉え,動的機能制御の新たな可能性が見えてきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルシウム関連膜タンパク質の機能制御について,当初は生理学的実験と分子生物学的解析からアプローチする計画であったが,後者についてはいくつかの困難がある。一方,ラフトの動態を可視化する道を拓くことが期待できる,新しい蛍光脂質を使用できる見通しがついただけでなく,この蛍光色素をつけた脂質の1分子動態の解析により,当初計画以上の成果が期待できることがわかった。予備実験で良い成果が得られているので,期間を延長して取組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
目的に至る全体の計画の流れはおおむね予定通りで問題ないが,生理学実験と平行して行う予定であった分子生物学的手法に代わって,光学的解析を中心に据え,カルシウムによる鞭毛運動制御にアクチン繊維がどのように関わるかを明らかにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究中に,研究遂行に必須である機器の一部が故障し,一時実験を中断せざるを得なくなった.しかし,これを好機と捉え,実験方法の微調整を試みたところ,新しい発見に結びついた.この発見は,当初仮説として予想した考えとよく一致することから,この発見に基づく実験と解析を進めることにより,最終目的を達成できる可能性が高いと判断した.そこでこの追加実験を行うこととしたため次年度使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
実験を遂行するための研究補助員の人件費と,物品費等の追加実験のための経費として使用する.
|