研究課題
精子は,卵からの誘因物質に引き寄せられるようにして,遊泳方向を巧みに制御し,受精に至る。ウニなどの精子に見られる遊泳方向の制御は,カルシウム濃度に依存した鞭毛運動の変化によって引き起こされる。しかし,膜タンパク質を介する細胞内カルシウム濃度の調節,およびカルシウムによる鞭毛運動の制御の機構は,ほとんど解明されていない。本研究では,カルシウム反応を「機械刺激により誘導」するという技術的ブレークスルーにより,遊泳する精子の挙動から,カルシウム動態の高精度の解析を実現し,カルシウムの流入と排出についての膜直下のアクチン繊維を介した新しい制御モデルを提案し,その検証実験を行い,カルシウムによる鞭毛運動制御の方向性を示すことを目指した。機械刺激に依存した精子の遊泳方向制御過程の解析から,カルシウム排出過程の早い時期にアクチン繊維の存在が反応の制御に関与する可能性が明らかとなった。さらに,このアクチン繊維の関わるカルシウム濃度の制御系における役割の検討を行い,カルシウム排出が,ラフト形成を伴った制御によっているのかを明らかにするため,ラフト関連脂質を可視化することによりこれを実現することを目指した。そこで,ラフト動態を反映すると予想されるスフィンゴリン脂質の蛍光プローブをマーカーとして、カルシウム動態に対応した鞭毛の運動と蛍光プローブの1分子解析を行なった。その結果、カルシウム排出に関わる膜タンパク質の動態が、ラフト移動に伴う動的機能制御と一致することを見出した。以上の結果から、カルシウム動態におけるアクチンおよび膜ラフトの役割の概要が明らかとなった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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