研究課題
基盤研究(B)
本研究は、モノアラガイ体内のインスリン様ペプチドの濃度を厳密に測定し、その濃度を完全にコントロールすることによって、インスリン様ペプチド濃度と学習成績との関係について調べることを目的としている。モノアラガイのインスリン様ペプチドは、ほ乳類のインスリンと同様に、体内のグルコース濃度を下げたり、神経系の成長に効果があることが知られている。以前から、体内インスリン濃度と学習・記憶などの脳高次機能との間に関係があるのではないか?という、まことしやかな話が、神経生物学の研究分野にはあった。しかし最近では、とくに糖尿病とアルツハイマー病とが類似疾患であるという報告も出現し、「アルツハイマー病が3型糖尿病である」とまで言われ始めている。すなわち、動物種を超えて、インスリンと脳高次機能との関連は早急に解明されるべき重要な課題であり、その解明に挑む本研究が導き出す結果は、基礎生物学はもとより医療系においても十分大きなインパクトを与えると予想される。ところで、モノアラガイにおいて、インスリン様ペプチドを酵素免疫法(つまりELISA法)で測定するには、定量する抗原とそれに対する抗体が必要である。そこでまず、モノアラガイからインスリン様ペプチドを含む脳部位を単離し、インスリン様ペプチドの精製を行った。そして、作製したインスリン様ペプチドを抗原とし、抗体を作製することを、現在も継続中である。併せて、ペプチド配列から合成ペプチドを作製し、それをもとに抗体を作製することも、現在継続中である。一方、1匹あたりのグルコース量は大変微量である。そこで測定法の高感度化を模索した結果、グルコース濃度を高感度に定量できるようになってきた。さらには、市販のほ乳類のインスリンを体内投与して、行動に与える影響を調べた。その結果については現在解析中である。
2: おおむね順調に進展している
抗体と抗原については、予定通り、作製が進んでいる。グルコース濃度測定法については、すでに完成し、データをまとめて論文として公表し始めている。行動実験も、予定通りに、実験の遂行と解析が進んでいる。
予定通りに推進する。
研究はおおむね順調に遂行されている。ただし、人件費・謝金として予定していた方が妊娠・出産となり、その分の支払いを行わなくて済むようになった。したがって、この分を翌年度に使用する。上記金額分を、物品費にまわし、さらなる研究の展開を図る。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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