研究課題
前年度は引き続き、1. In vivo 由来の始原生殖細胞発生過程における不活性X染色体再活性化ダイナミクスの解析を行った。2. 多能性幹細胞(ESCs)より始原生殖細胞様細胞を誘導して、in vitro由来の始原生殖細胞様細胞における不活性X染色体の再活性化ダイナミクスの解析を行った。1ではRNA FISHを用いて、E9.5及びE14.5胚由来始原生殖細胞におけるX染色体上遺伝子の両アレルからの発現解析を行った。その結果、E9.5では解析した一部の遺伝子、特にテロメア側に位置する遺伝子で両アレルからの発現が15%未満の細胞で観察された。一方、E14.5胚由来の始原生殖細胞では80%以上の細胞で解析した10種類のX染色体上遺伝子で両アレルからの発現が観察された。この結果から再活性化はこの発生ステージで完了していると考えられる。また、2では1と同様にRNA FISHを用いて、誘導開始後、6日目の始原生殖細胞様細胞(遺伝子の発現パターンからE9.5胚相当)におけるX染色体上遺伝子の両アレルからの発現解析を行った。その結果、解析した一部の遺伝子で両アレルからの発現が5%未満の細胞で観察された。in vivo 胚の細胞における発現パターンと比較した場合、低い事が確認された。この結果から誘導過程において、片方のX染色体を消失している可能性が考えられるため、RNA FISHに続いてDNA FISH を行い、誘導過程におけるX染色体の本数を確認した。その結果、誘導開始前のES細胞ではほとんどの細胞が2本保持していたが、誘導が進むに連れて50~60%の細胞が片方のX染色体を消失している事が判明した。このため始原生殖細胞様細胞における不活性X染色体の再活性化ダイナミクスをDNA FISHとRNA FISHをあわせて2本X染色体を持つ細胞でのみ再解析中である。
4: 遅れている
In vivo 由来の始原生殖細胞 (E11.5から14.5まで) の解析は完了した。E9.5-10.5 胚由来の始原生殖細胞は非常に少量しか回収出来ない為に、解析が遅れている。一方、In vitro由来の始原生殖細胞様細胞の解析は上記したように再解析中である。また、前年度までの問題であった細胞のカバーガラスからの剥離はコーティング剤をPoly-L-Lysineを用いる事により防ぐ事が出来るようになった。
E9.5-10.5 胚由来のIn vivo始原生殖細胞は非常に少量しか回収出来ないので、生殖隆起から凍結切片を作成し、始原生殖細胞マーカーを用いた蛍光免疫染色とRNA FISHを組み合わせる事で解析出来る細胞数を増やす。一方、始原生殖細胞様細胞の解析は上記したようにRNA/DNA FISHでXX細胞のみを解析する。それと平行して、始原生殖細胞での再活性化におけるXist遺伝子の発現抑制に関わる因子と仮定して、始原生殖細胞様細胞誘導に必須の3因子(Blimp1,Prdm14,Tfap2c)をそれぞれエピブラスト様細胞もしくはより分化した体細胞に強制発現させてXistの発現への効果を解析する。
当初予定していた物品を購入しなかったため。
当該助成金は物品費としてし使用する予定である。
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Cell Stem Cell.
巻: 17 ページ: 178-194
10.1016/j.stem.2015.06.014.