研究課題/領域番号 |
25291077
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
真木 寿治 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (20199649)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 染色体再編・維持 / 遺伝的不安定性 / 繰り返し配列 |
研究概要 |
染色体再編に重要な役割を果たすと考えられているDNAの二本鎖切断が細胞内で生じるプロセスを理解することを目的として、DNA上の逆向き反復配列に依存した十字型DNA構造の形成とそれが引き起こす二本鎖切断と遺伝的不安定性の解析を進めており、以下の成果を得た。 1)rpsL変異検出系での染色体異常の発生に及ぼすSbcCDとDNAトポイソメラーゼの効果 rpsL変異検出系に用いる大腸菌株MK811(Kanie et al., 2007)を用いて、欠失、重複、逆位などの染色体異常や相同染色体間組換えの頻度を測定したり、染色体異常の構造解析を容易に行える。この系を用いてDNAジャイレースの特異的阻害剤を細胞に作用させた時の遺伝的影響を解析した。その結果、細胞増殖を少し遅延させる程度の阻害剤濃度では相同染色体間組換えの発生頻度が顕著に上昇することを見いだした。欠失や、重複、転座などの発生頻度については、それらの上昇は認められなかったが、低下するかどうかを明確にすることはできなかった。現在、sbcCD欠損株での染色体異常の解析を進めている。 2)逆向き反復配列IR-246のSbcCD依存遺伝的不安定性に及ぼすDNAトポイソメラーゼの効果 246bpの長さの逆向き反復配列を持つプラスミドDNA(pIR246)は野生型大腸菌細胞内では極めて不安定であり、形質転換が不可能である。しかし、sbcCあるいはsbcD変異株では安定に保持される。このことを利用して、IR-246の遺伝的不安定性を定量的に測定する実験系の構築を開始した。現在までに、野生株とsbcCD欠損株でのpIRプラスミドの遺伝的不安定性を定量的に測定する方法を開発し、反復配列周辺で生じる遺伝的変化の塩基配列レベルでの解析を進めている。また、sbcC遺伝子をアラビノースプロモーターの下流にクローン化したプラスミドの作製が進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
sbc遺伝子をアラビノースプロモーターの制御下で発現させるプラスミドの作成に予定よりも手間取っているが、rpsL変異検出系を用いた研究は予定よりも早く進行しており、平成26年度中には、遺伝的解析の大部分を予定通りに進めることができると判断している。また、SbcCDタンパク質の生化学的解析も順調に進んでいるので、計画全体は幾分前倒しで進展するものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、遺伝学的解析と並行して生化学的解析を推進していく計画である。生化学的解析の中心は、oriCプラスミドDNAの試験管内複製系での十字型DNA構造の発生機構を解明することと、SbcCDタンパク質の詳細な酵素学的解析を行うことである。両方共に、すでに研究を開始しており、順調に進展している。このことから、ほぼ計画通りに研究を進めていくことになると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子クローニングの実験の進捗が予定よりも遅れたことが主たる要因である。生化学的解析では物品費をかなり必要とするが、生化学的解析は来年度以降に計画しているので、本年度は一部しか使用しなかった。 遺伝子クローニングおよび生化学的解析の実験に必要な物品費として使用する。
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