染色体再編に重要な役割を果たすと考えられているDNAの二本鎖切断が細胞内で生じるプロセスを理解することを目的として、DNA上の逆向き反復配列に依存した十字型DNA構造の形成とそれが引き起こす二本鎖切断と遺伝的不安定性の解析を進めており、以下の成果を得た。 1)逆向き反復配列に依存した染色体異常を特異的に検出する実験系の構築 多数の大腸菌集団の中から変異や染色体異常が生じた細胞をポジティブに選択できる実験系としてrpsL変異検出系は優れている。rpsL遺伝子配列の後半部を含む逆向き反復配列をrpsL遺伝子配列の下流に導入して、逆向き反復配列に依存した染色体異常を特異的に検出・解析する実験系を開発した。実験系に用いる大腸菌株の作成は完成したが、残念ながら、この株はストレプトマイシン耐性を示し、変異検出には用いることができないことが分かった。 2)逆向き反復配列IR-246に依存した十字構造の発生機構の解析 昨年度までに、oriCプラスミドDNAを鋳型にした試験管内複製系を基にして、複製フォークの進行を詳細に解析する実験系を用いて、複製に依存した十字構造の発生を解析する方法を開発した。さらに、in vitro oriC系での反応をDNAジャイレースを加えずに進めた際に生じる複製フォークの進行が停止した複製中間体の定量解析を行い、この条件で複製中間体が安定して存在することを確認した。本年度は、分離した複製中間体にDNAジャイレースを再添加して複製フォークを始動した時に、逆向き反復配列IR-246に依存した十字構造が発生するかどうかを解析し、確かにDNAジャイレースを再添加した時に、逆向き反復配列が十字構造を形成することを示すことができた。
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