研究課題
「DNAメチル化配列特異性の変換による、エピゲノムのデジタルな変換が、グローバルな遺伝子発現の変換をもたらし、自然選択の素材となるエピゲノムの多様性をもたらす」という仮説を支持する、次の結果が得られた。<ピロリ菌> ピロリ菌の多数の配列特異的なDNAメチル化酵素遺伝子をノックアウトし、RNA-seq法によりトランスクリプトーム解析をおこなった。特定のDNAメチル化酵素が、他のDNAメチル化酵素の発現に影響する ネットワーク構造を明らかにした。特定の遺伝子群の発現への影響から、 特定のメチル化酵素が、おそらく特定の遺伝子群の発現制御を通して、適応的形質(ある種のストレス耐性など)に影響することを実験的に証明した。 ゲノムの比較から、これらの制御機構がどのように成立したかを再構築した。<家族内感染でのゲノム進化> 家族メンバーに感染しているよく似たピロリ菌について、ゲノムをショットガン解読し、どのような遺伝子にアミノ酸変化を伴う突然変異が起きているかを検討した。DNAメチル化系の遺伝子、外膜タンパク質病原因子など、ホストとの相互作用に関与する遺伝子があった。<制限修飾系の進化>私達が発見したDNAの塩基を切り出すタイプの制限修飾系について、その系統的分布、進化を明らかにした。それらが、動く遺伝子であることが明らかになり、また東アジアの人類移動への示唆が得られた。<大腸菌>プラスミドに存在するDNAメチル化酵素を導入した所、特定のトランスクリプトーム変化が観察され、特定の形質(ある種の運動性)が変化した。
1: 当初の計画以上に進展している
メチローム、トランスクリプトーム解析が順調に進んだ。また、これらから形質を推定し、証明できた。
実験では、予備的な結果が得られている競争実験を完成する。続けて来たゲノムインフォマティクス解析を、これまでのオーミクス解析と実験解析の成 果と統合して、進化過程を再構築し、エピジェネティックス駆動適応進化モデルを検証する。
多数のピロリ菌DNAメチル化酵素変異体および大腸菌のDNAメチル化酵素導入株のトランスクリプトームデータの詳細な解析が必要とされた。大部分は明快な結果がえられた。しかし、一部には予想外に時間がかかった。このために、形質の解析が一部の変異体について遅れた。
H27年9月までの間に、有望な少数のメチル化酵素変異体について形質解析を済ませ、トランスクリプトームと対応付ける。これを進化解析と統合した形で、取りまとめ、発表する。
すべて 2016 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 6件) 図書 (3件) 備考 (1件)
Plos One
巻: 印刷中 ページ: -
Nucleic Acids Research
巻: 43 ページ: 2841-2852
10.1093/nar/gkv116
Nucleic Acids Res.
巻: 42 ページ: 70-86
10.1093/nar/gkt711
Nat. Commun.
巻: 5 ページ: 3178
10.1038/ncomms4178
PLoS Genetics
巻: 10 ページ: e1004272
10.1371/journal.pgen
Encyclopedia of Life Sciences (eLS)
巻: - ページ: A21652
Molecular Biology and Evolution
巻: 31 ページ: 1728-1740
10.1093/molbev/msu120
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/ikobaya/index.html