研究課題/領域番号 |
25291086
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田中 幹子 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (40376950)
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研究分担者 |
村上 安則 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (50342861)
黒川 大輔 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40342779)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発生分化 / 形態進化 |
研究概要 |
本研究では、海で生活していた古代脊椎動物の一部が陸にあがった際に、その対鰭を四肢へと劇的に進化させたプロセスを明らかにすることを目的としている。この目的で、平成25年度は、1)対鰭と四肢の骨格と筋肉、神経の形成過程におけるパターンの比較と2)骨格と筋肉、神経パターンの変化の原因となる遺伝子候補の探索を行った。さらに、骨格パターンの変化の原因と思われる遺伝子の候補については、原因ゲノム領域を同定できたので、平成26年度以降に行う予定であった3)原因遺伝子の発現の変化の要因の探索にも着手することができた。 1) 対鰭と四肢の骨格と筋肉、神経の形成過程におけるパターンの比較と2)その変化の原因となる遺伝子候補の探索 対鰭から四肢への形態進化のプロセスを理解するためには、対鰭と四肢のそれぞれの発生プロセスを理解することは重要である。そこで、軟骨魚類の対鰭原基とニワトリの肢芽で骨格パターン形成を制御する遺伝子発現を比較し、対鰭から四肢へと骨格パターンを変化させる原因となった遺伝子の候補を同定した(田中)。また、筋肉パターンの形成過程については主要な筋肉マーカーを用いて比較発現解析を行った(田中)。さらに、複数の羊膜類胚の肢芽における神経の発生過程を比較解析することで、少なくとも羊膜類の四肢においては、神経支配の形成に反発性の神経ガイド因子Sema3A を介した共通の機構が働いている可能性が示された(村上)。 3)原因遺伝子の発現の変化の要因の探索 対鰭から四肢への骨格パターンの変化の原因と思われる遺伝子候補の原因ゲノム領域について、ニワトリ胚の肢芽で機能解析することによって同定できた(田中)。また、鰭原基の形成に関わる原因ゲノム領域をTALEN で編集した魚類胚の作成に成功できた(黒川)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、1)対鰭と四肢の骨格と筋肉、神経の形成過程におけるパターンを比較し、2)その変化の原因となる遺伝子候補を探索することであった。骨格パターンに関しては、計画通りに軟骨魚類胚の対鰭原基とニワトリ胚の肢芽で骨格パターンの形成に関与すると考えられた遺伝子の発現パターンを比較することで、原因遺伝子の候補を同定するに至った。この原因遺伝子については、原因ゲノム領域をニワトリ胚を用いた機能解析により同定できた。さらに、鰭原基の形成に関わる原因ゲノム領域を編集した魚の作成にも成功した。これらの成果は、本来平成26年度以降に行う予定であった3)原因遺伝子の発現の変化の要因の探索に相当するので、計画よりも順調に進んでいると言える。筋肉パターンについては、計画通りに主要な筋肉マーカーを用いた比較発現解析を行うことができた。神経パターンについては、複数の羊膜類胚の肢芽における神経の発生過程を比較し、羊膜類において、神経支配の形成にSema3A を介した共通の機構が働いていることが示された。対鰭での神経パターンとの比較については、今後も進めていく予定である。これらのことから、現在までの達成度はおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究は、ほぼ計画通りに行われたので、大幅な計画の変更はない。また、計画を上回る成果としては、初年度のうちに骨格パターンの変化を説明できる遺伝子が見つかった点があげられる。また、筋肉パターンについても、既知の筋肉パターン形成遺伝子の発現比較解析から、興味深い結果が得られており、神経パターンに関しても、Sema3A を介した神経支配を比較することの有効性が明らかとなった。研究計画では、原因遺伝子の候補が初年度のうちに見つからない場合を見越して、初年度のうちに網羅的な発現解析を行う予定であったが、すでに有力な候補遺伝子が得られたことに加え、平成26年1月に Nature に発表されたゾウギンザメのドラフトゲノムは網羅的発現解析を行うには不十分であった。そこで、有力な候補遺伝子については、成果発表に必要な機能解析や原因ゲノム領域の同定を計画より早めて初年度のうちから着手していくことを優先することにした。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に原因候補遺伝子を同定できたので、研究成果の発表に必要な機能解析と原因ゲノム領域の同定を優先し、平成25年度に行う予定であった網羅的な発現解析をゾウギンザメのゲノムデータベースの完成度にあわせて、平成26年度以降に行うことにしたため。 初年度に同定できた原因候補遺伝子の機能解析と原因ゲノム領域の同定に必要な試薬の購入費と成果発表費に充てる予定である。網羅的な発現解析が可能であった場合は、トランスクリプトーム解析の費用に充てる。
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