研究課題/領域番号 |
25291087
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
川井 浩史 神戸大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30161269)
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研究分担者 |
長里 千香子 北海道大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00374710)
山岸 隆博 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (30379333)
羽生田 岳昭 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40379334)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コンブ目 / 分子系統 / 網羅的cDNA塩基配列解析 / 生物地理 / 藻場構成種 |
研究実績の概要 |
多遺伝子解析については,14属29種について、葉緑体ゲノムの6遺伝子(atpB, psaA, psaB, psbA, psbC, rbcL)とミトコンドリアゲノムの2遺伝子(ocx1, cox3)の塩基配列を決定した。また、ミトコンドリアゲノムの4遺伝子(nad2, nad4, nad5, nad6)の塩基配列を決定するため、新たなPCR用プライマーの開発を行った。 また、ニセツルモ,アウレオファイクス、マコンブ、スジメ、チガイソ,ワカメ,ミツイシコンブ,などの網羅的cDNA解析を実施した結果,糖加水分解酵素(GH)、糖転移酵素(GT)シオミドロゲノムにある遺伝子のホモログは検出されたが、ないものは検出されなかった。また、GT、GH共に、シオミドロよりも各GT、GHのファミリーで遺伝子数が少し増加している可能性が示唆された。本解析はトランスクリプトームデータを使用しているので、実際にはコンブ類のゲノムにはさらに多くの遺伝子が存在していると考えられる。つまり、コンブ類の系統で、GT、GHの遺伝子重複が起こり、各遺伝子の機能分化(発現パターンや酵素活性)によって糖代謝経路が複雑化している可能性が示された。 また、胞子体の原形質連絡の発達過程について、電子顕微鏡によりその発生を追って観察したところ、発生初期段階(組織未分化)では、原形質連絡は隔壁内に分散して存在しているが、表層、皮層への分化に伴って、原形質連絡が密集する領域ピットフィールドを形成することがわかった。また、ピットフィールド周辺では、Y字型の原形質連絡が観察された。このような形態を示す原形質連絡は、既存の原形質連絡が分枝し、新たな原形質連絡を形成する途中であると予測される。今後、二次原形質連絡が出現するタイミング、一次原形質連絡との形態的、機能的違いについて調べていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の課題であった網羅的cDNA解析については、若く、付着生物などがほとんど無い清浄な藻体からRNAを抽出することで、解析を実施することができた。また、鍵となる系統群であるアウレオファイクス培養藻体からも必要量の核酸抽出を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
分子系統解析については、鍵となる分類群を対象に、ミトコンドリアの多遺伝子解析を実施し、これまでに得られている葉緑体遺伝子や核リボソームDNA領域での解析結果との比較をおこなう。多細胞化、大形化進化の鍵となった形質については、細胞壁多糖類の生合成系に関わる遺伝子の解析結果について比較検討を行う。生物地理について、それぞれの系統群の分布情報と分子系統解析の結果から得られた詳細な系統関係に基づきその拡散経路について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養下での成長が遅いなど、培養藻体からの抽出が困難であったものについて、清浄な若い胞子体を用いて核酸抽出を行うこととしたが、これらの藻体の出現時期のため、採集が冬季になった。このため、網羅的DNA 塩基配列解析が一部年度内に終了せず、次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
網羅的DNA塩基配列解析はH27年度の早い時期に終了する予定である。
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