研究課題/領域番号 |
25291091
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
加藤 雅啓 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 名誉研究員 (20093221)
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研究分担者 |
西山 智明 金沢大学, 学内共同利用施設等, 助教 (50390688)
山田 敏弘 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (70392537)
厚井 聡 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (60470019)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 進化 / 形態多様性 / 適応進化 / 中立進化 / 遺伝子 |
研究概要 |
カワゴケソウ科の中立的(非適応的)と思われる形態の多様化を検証するために、国内外で野外調査し、資料を採集した。これまでに集めた資料も用い、以下の解析を進めた。 1. 本科の形態多様化に関わったと推定される遺伝子群を網羅的に探索するため、RNA-seq.解析により取得した遺伝子配列を用い、分子進化学的解析を行なった。その結果、Zeylanidium lichenoidesにおいて、相対進化速度が上昇していることがわかった。同義置換率が高い遺伝子が多く検出されたことから、突然変異率自体が上昇した可能性が考えられる。 2. 子葉枚数の中立進化を検証するため、胚・実生の観察を行なった。その結果、Hydrodiscus koyamaeとカワゴロモ属のHydrobryum austrolaoticum他3種で子葉が1枚しか作られないことを確認した。これから、カワゴロモ群において少なくとも5回、子葉の枚数が変化したと推定され、本科を含む真正双子葉植物で保存的な子葉枚数の中立的変化が起きた可能性を示唆された。現在、子葉枚数に関与する候補遺伝子を解析する準備を行っている。 3. 本科の特異な形態形成と多様化は、植物ホルモンの極性形成の変更による多面的な影響によって説明できる可能性がある。そこで、カワゴロモの胚嚢発生(とくに極性形成)に関わる遺伝子群の発現解析を行った。そのために、カワゴロモの若い花をin situ hybridization用に固定し、胚嚢で発現する遺伝子の探索を開始した。 4.Hypericum perforatum、Terniopsis brevis、カワゴロモからそれぞれ4、2、7ライブラリーを作成し124.5、115.6、131.9M対リードより10万個近い、約5.5万個、34万個近いコンティグを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採集したかった種属のうちカワゴケソウ、カワゴロモ、Dalzellia zeylanica、Indodalzellia gracilis、Indotristicha ramosissima、Zeylanidium lichenoidesなどを採集できたが、形態進化を解析する調べるうえで重要なIndotristicha tirunelvelianaなどは採集できなかった。分子進化学的解析はゲノムワイドな遺伝子配列が得られ、分子進化速度の比較ができつつある。12月中旬に開花した花をISH用に固定し、遺伝子単離実験をスタートさせたが、結果が得られるのはこれからである。胚・子葉で子葉の枚数を観察することにより、平行進化が確認され、子葉枚数の変化にかかわる遺伝子発現解析は準備が整った。器官構成、機能移管の解析のために必要な種子を入手した。
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今後の研究の推進方策 |
標本資料の入手、解析実験は前年度の結果を踏まえて継続してするめる。未採集の種類については海外研究協力者の協力を得て、入手につとめる。 カワゴロモの胚嚢形成過程の観察を進め,今年度に調整したRNAから胚嚢で発現する遺伝子の単離を進める。また,単離した遺伝子のISHによる発現解析を行う。 網羅的遺伝子配列の分子進化学的解析、器官の構成変更と根やシュートの別器官への機能移管については、計画通りに研究する。また、本科の特異な形態形成と多様化は、植物ホルモンの極性形成の変更による多面的な影響によって一括して説明できる可能性があるため、特に胚嚢の極性形成を担う植物ホルモン制御因子の発現解析を追加する。 カワゴロモ群で単子葉性が生じた発生プログラムの変更点を明らかにし、単子葉化の機構を推定し、中立化の程度を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
各費目で順次支出して、基金に少額の残金が残った。 次年度の物品費として使用する
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