研究課題
自家不和合性は、自家受精を遺伝的に防ぐシステムであり、被子植物に普遍的に見られる。およそ 50 % の種が自家不和合性を備えている (Igic ら 2008)。自家花粉の識別は S 遺伝子座によって制御されている。この遺伝子座は、雄側(花粉または葯)で発現する識別遺伝子と雌側(雌しべ)で発現する識別遺伝子とからなる。そして、たくさんの対立遺伝子が分化している。花粉(または花粉親)が持つS対立遺伝子と雌しべが持つS対立遺伝子とが合致すれば、花粉の発芽または花粉管の伸長が阻害される。それにより自家受精が阻止される。S 対立遺伝子は、どのように多様化したのであろうか? 新しい S 対立遺伝子が分化するためには、お互いに識別し合う変異が、雄側と雌側とのそれぞれにおいて生ずる必要があるのだ。これまでの理論的研究から、S 対立遺伝子の多様化は非常に難しいことがわかっている。本年度は、昨年度の理論的研究をさらに進めた。その結果、S対立遺伝子が多様化する条件について新たな理論を提唱することができた。この理論にもとづきシミュレーションを行ったこところ、数1000世代で、50-60個のS対立遺伝子が分化することがわかった。また、解析的な解を求めたところ、S対立遺伝子が恒常的に増えていくことも証明された。本年度の成果により、S対立遺伝子の多様化のメカニズムが解明された。
2: おおむね順調に進展している
理論的解析が順調に進んでいる。概ね期待通りの結果が出ている。
理論的な解析をさらに進める。具体的には、より一般的な条件下で解析的な解析を進める。これにより、どのような条件下でS対立遺伝子の多様化が起きるのか、より一般的な回答を得ることが期待できる。さらには、より長期間かつより多くの条件を取り入れたシミュレーション解析も行う。
国内旅費が若干少なめに済んだため。
国内旅費に組み込む
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