研究課題
40年ほど前に日本に侵入したと考えられるミチタネツケバナと、2000年以上前から日本に定着していると考えられる同属のタネツケバナについて、集団間の遺伝的な分化と機能的な分化がどのように異なるかを調べた。距離あたりの温度環境変化が大きいと考えられる東日本の青森県から静岡県まで2本のトランセクトを引き、合計50ヶ所から両種の種子をサンプリングした。うち36ヶ所の集団についてRAD-seqを用いた遺伝子解析を行い、18ヶ所の集団について耐凍性の解析を行った。遺伝子解析は、ゲノムを読むところまでは終了したが、系統樹の解析に若干てこずっており、最終的な結果はまだ出ていない。予備的な解析では、タネツケバナはかなり古い時代に集団間で分化し、その後集団間の違いは固定されていることが示唆された。ミチタネツケバナは遺伝的な距離が近い集団のグループがいくつか認められた。これはミチタネツケバナが日本に複数回侵入したことを示唆する。耐凍性については、通常温度で育成した個体と低温に数日さらして順化させた個体の葉について、凍結が始まる温度(凍結温度)と、光合成機能が50%低下する温度(障害温度)を調べた。未順化タネツケバナの凍結温度は生息地の日最低気温と正の相関があった。ミチタネツケバナの凍結温度とタネツケバナのLT50には有意な集団間差が見られなかった。ミチタネツケバナの障害温度には集団間差が見られ、最低気温と積雪深の交互作用が影響していた。以上から、両種とも生育地の環境に適応した結果集団間に機能分化が起こっていること、分化が起こっている機能が異なることが示唆された。なお、ミチタネツケバナの機能分化が侵入以前の違いを反映しているのか、侵入後の進化を反映しているのかを判断するのは、遺伝子解析の結果を待つ必要がある。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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