研究課題
平成28年度は、一昨年度から開発を進めていた重水素トレーサーを利用した食物網動態の定量的解析法(パルスチェイス法)を実用化した。はじめに八重山地方の海草藻場葉上生底生動物群集を対象として、N-15標識法と併用することにより、藻場内で生産される現地性資源と外部から供給される異地性資源(ここではサンゴ粘液)に対する依存度とその環境依存性を明らかにすることを目的としたメソコスム実験を8月に実施した。実験試料の分析も終了している。この実験では異地性資源の取扱いに改良の余地があり、必ずしも狙った結果が得られなかったものの、開発したパルスチェイス法の有効性を確認することができた。次に、交付申請書に記載の通り、前年度から継承して屋外メソコスムを利用したアマモ場底生生物群集を対象とする酸性化実験を10月に実施した。前年度の実験では二酸化炭素分圧の調整機構が途中で不良となり長期間の安定した実験条件を実現できなかったので、この点を改善するとともに、上記の重水素パルスチェイス法を初めて適用した。29年3月の段階では試料の分析が未了であり、ここで成果を紹介することができないものの、実験の経過は順調であった。本補助事業のもう一つの大きな柱であるDNAバイオマーカーを利用した分解者群集解析に関しては、前年度までに既往研究における諸外国での解析例と比較することによりアマモ場根圏に特有の微生物フロラを抽出する作業を進め、微生物相の多様性が高いデトリタス食物連鎖の動態の解析のために一定の成果を上げることができた。平成28年度からは、デトリタスそのものやバクテリアの二次生産物に含まれる環境DNAに着目してデトリタス食物網の動態や有機物の長期滞留を評価する技術の確立を目指す方針に転換して、アマモ場・ガラモ場・マングローブ土壌に固有な環境DNAの検出・定量法の高度化を進めているところである。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
Limnology and Oceanography
巻: 62 ページ: in press
10.1002/lno.10478