研究課題
本年度は、魚類の成長に伴う栄養段階の変化、および環境条件の異なる地点間で栄養段階の差異がみられるかを検証するため、仙台湾に生息するヒラメならびにイシガレイを分析した。アミノ酸窒素同位体比による推定栄養段階は、ヒラメ、イシガレイいずれにおいても成長に伴い上昇しており、胃内容物調査等から推定する栄養段階の変化とも傾向は一致した。また、浅場にいる個体は、沖合にいる個体のそれに比べて低い傾向にあることがわかった。この結果は、浅場にとどまり続ける成魚がいる可能性を示唆している。また、北海道の東部地域と南部地域を対象に、ヒグマの骨と食物資源の試料に関して炭素・窒素・イオウの安定同位体分析を行った。ヒグマ骨試料を、北海道開発開始以前(Period 1: 1920年以前)、開発の初期段階(Period 2: 1931-1942年)、開発完了後(Period 3: 1996年以降)の3つの時代区分に分け、それぞれの時代のヒグマの食性を比較した。その結果、道東地域ではサケの利用割合が19%から8%まで減少し、陸上動物の利用が64%から8%にまで減少していた。また、道南地域では陸上動物の利用割合が56%から5%まで減少していた。窒素同位体比値の時間的変化から、この大規模な食性の変化は、概ねここ200年の間に急激に進行したことが示された。ヒグマの食性は時代経過に伴って肉食傾向から草食傾向に大きく変化していたことが明らかになった。また、種間関係によって互いの個体群動態に影響を及ぼすような群集動態について、群集構造と個体群動態の間の関係を理論的に研究した。これらの研究から、食物網に代表されるような群集ネットワークが自然において満たしているべき条件が予測された。また、より高次の生物学的レベル(生態系)における効率を評価する理論的手法を検討し、これを実証データに適用することを試みた。
2: おおむね順調に進展している
野外調査、各種機器分析、論文とりまとめについて順調に進めている。
平成27年度は最終年度のため、野外調査で得られたデータをもとに、最終成果のとりまとめと論文執筆に努めていきたい。
アミノ酸同位体比分析に関する消耗品は、分析前処理過程の数や方法によって変動するため。
アミノ酸同位体比分析に関する消耗品に充当予定
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (32件)
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