研究課題/領域番号 |
25291107
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
前田 隆浩 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40284674)
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研究分担者 |
高村 昇 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (30295068)
山崎 浩則 長崎大学, 医療推進センター, 准教授 (40346953)
草野 洋介 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (70325637)
青柳 潔 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80295071)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 頸動脈内膜中膜複合体 / 心臓足首血管指数 / 糖尿病 / TG-HDL比 / 血管リモデリング / CD34 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究では、1,598人(男性:554人、女性1,440人)の住民から基本的臨床データをはじめ、頸動脈内膜中膜複合体厚(CIMT)、心臓足首血管指数(CAVI)など動脈硬化の臨床指標データと臨床検体を収集した。これまでに蓄積したデータをもとに動脈硬化に関連したリスク解析を行い、関連する学会誌に論文を発表した。 近年、骨髄機能と血管リモデリングの間には強い関連があることが報告されているが、骨髄機能指標としてヘモグロビン値に着目して解析した結果、非過体重者(BMI<25kg/m2)においては、ヘモグロビン値が高血圧(Intern Med. 2014;53:435-440)、及び動脈硬化(Geriatr Gerontol Int 2014;14:811-818)と有意な正の相関関係を示すことを証明した。また、糖尿病のうち動脈硬化のリスクになるのは中性脂肪-HDLコレステロールの比率が高い糖尿病(高TG-HDL糖尿病)のみであることを報告してきたが(Atherosclerosis 2013;228:491-495)、同様に高TG-HDL糖尿病のみがヘモグロビン値と有意な正の相関関係をしていた(Intern Med. 2014;53:837-843)。 また、慢性腎臓病(CKD)は動脈硬化と強い関連がある一方で、腎機能低下が貧血の原因でもある。高齢男性においてヘモグロビンと腎機能の関係について検討し、CKD(GFR<60 )は非CKD(GFR≧60)と比較して有意な貧血のリスクになるが、その関係は軽度腎機能低下(90>GFR≧60)において有意に貧血リスクが軽減することによると判明し報告した(J Physiol Anthropol. 2014;17:33:7)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、主に長崎県五島市において一般住民健診と連動した形で実施している地域コホート研究である。平成24年度に478人(男性184人、女性294人)、平成25年度に328人(男性135人、女性193人)、そして平成26年度には1,598人(男性:554人、女性1,440人)の住民に協力してもらいデータと検体を収集することができた。平成26年度には研究に参加する人員を拡充し、広域に活動することができたため大幅にデータとサンプル数が増加した。この収集したサンプルを用いて多岐にわたる関連因子を解析するとともに、これまでに収集したデータをもとに中間解析を進めている。この中間解析の結果については、関連学会で発表するとともに、今後の研究の方向性を検討するために活用する。 また、平成26年度には五島市と長崎大学の包括協定に基づいた情報提供に関する覚書が交わされ、研究に参加していただいた住民の追跡調査体制が整った。しかしながら、医療機関のデータと健診データを連結する方法が未完成であり、本研究課題の一つである動脈硬化性疾患の発症を捉える研究体制は未だ充分ではない。研究フィールドにある中核病院にNECデータウェアハウス(DWH)が導入されたため、平成26年度末の段階で中核病院、電子カルテメーカー、研究者側(委託した専属のシステムエンジニアを含む)の間でDWHを活用した情報連結の協議が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
五島市が実施する一般住民健診と連携した研究は今後も引き続き継続するが、研究登録された住民数が充実してきたことから、今後は追跡調査体制の確立と追跡調査の実施に力を入れていく予定である。追跡調査体制を確立する方策の一環として、中核病院の診療情報や自治体の住民情報との連結を進めるが、同時に住民健診でも追跡調査を実施し、得られた調査情報をデータベースに入力していく作業を平成27年度より開始する。 また、離島は高齢化率が高く、研究対象者が高齢者主体となることから、平成26年度に開始した本土の自治体と連携した生活習慣病研究を引き続き実施し、幅広い対象者からのデータ収集を目指す。 測定・解析に関しては、平成26年度に着手した遺伝子解析が進んでいないことから、平成27年度には専属の研究補佐員を配置してDNA抽出と遺伝子多型解析を進展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
動脈硬化関連因子の測定・解析については計画通り順調に進んでいるが、遺伝子解析などの一部の解析については、サンプルが充分に集まってから集中的に解析した方が効率的・経済的であることから、サンプルを保存しておき、平成27年度以降に実施することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
既に研究補佐員と検査機器を確保しており、平成27年度のデータ・サンプル収集状況とストックサンプルの数を確認しながらDNA抽出と多型解析を進めていく計画である。
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